恋のメンテナンスは必要ですか?

第十四話 「触るな」


「ねぇ、彩。探したよ?彩が卒業した小学校から学区内を手当たり次第に探して……やっと見つけた。葉山って苗字はあまりないから助かったなぁ……」
 
 恭平はジリジリと靴のまま家の中へ入ってくる。
 彼の瞳は黒く濁り、ただ彩だけを見つめていた。
 正気を失っているのが分かるほどに彼の行動は常軌を逸している。

 
「出ていきなさい!彩はあんたのものじゃない!」

 母は震えながらも彩を守るように立ちはだかり庇った。
 そんな母を虫を見るような目で恭平はジロリと睨む。

「っ!お母さんには何もしないで!!!」
「じゃあ、お前がしなきゃいけないことはわかるよな?」
「……っ……」

 全身の血の気が引いていく。
 見なくても自分の顔が青ざめているのがわかった。

「別れるって話した……」
「俺は「いい」なんて一言も言ってないけど?」
「そんなの……!」

「勝手に俺から離れるのは許さない。お前は俺がいないと何もできない、だろ?」

 
 どんなことも厭わないような視線に背筋が凍った。
 自分の考えを押し付けてくる恭平に恐怖を強く感じる。

 恭平はねっとりと笑いながら彩に近づき、腹部に触れながら言った。

 
「あぁ……あんなに注いであげたのに、子供ができないなんて。 ま(・)た(・) しないと、ね?」
「やめて!!!!!」
 
 彩は叫んだ。
 
 母に聞かれたくなかった。
 自分が受けた仕打ちの話なんて絶対に知られたくなかった。
 けれど、恭平は意味がわからないと嘲笑う。
 
「何?怒ってんの?いいじゃん。俺たちどうせ結婚する——」
 
 
「ふざけた妄想を他人に押し付けるのもいい加減にしろよ」

 
 急に聞こえた声に彩は俯いていた顔を上げる。
「……翔……さん」
 
 恭平の後ろで怒りに表情を歪めた翔を見つけ、彩の瞳から涙が流れ落ちた。
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