恋のメンテナンスは必要ですか?
「っ……う……」
大粒の涙が流れる。
腕の中で泣く彩を隠すように、翔は彩を内側へ引き寄せた。
翔は恭平に顔を向け、告げる。
「今警察が来ている。お前がしたことは全部警察も把握済みだ。」
『警察』と告げたのにも関わらず、恭平は余裕で笑っていた。
彩は気味の悪さに違和感を覚える。
〜♫
翔の胸ポケットからスマホが鳴る。
彼は胸ポケットからスマホを出し、耳に当て「……あぁ。わかった。」と話し終えると翔は通話を切った。
「鈴木恭平。」
それは恭平のフルネームだった。
(どうして翔さんが……)
「お前、今まで他の女性にもストーカー行為を繰り返して家の力で事件を消してきたな?」
「っ……」
恭平の顔に焦りが滲む。
「今回もそれでうまくいくと思ったんだろうが」
「ああ!そうだよ!俺の家が、この程度のことはどうにでもなる。」
警察のサイレンの音が遠くから聞こえていた。
どんどん近づいているのか、サイレンは次第に大きくなり。
「後でわかる。」
「……なんなんだよ、お前」
「神崎翔。」
「…………は?」
「あとは自分で考えろ。」
音が家の前で、止まった。
恭平は何かに気づくと額に汗を滲ませ、息を吐く。
「神崎……翔……って……神崎グループの……」
「警察だ!鈴木恭平!傷害罪、及び住居侵入罪。その他罪状により逮捕する!」
家の中に雪崩のように警察が突入する。
あっという間に恭平は包囲され、確保された。
「離せ!俺は……俺は!!」
「無駄だ。諦めろ。」
翔が冷たく恭平に言い放つと彼は割れそうな力でギリギリと歯を鳴らす。
好きだった人のおかしくなってしまった姿を見て考えてしまった。
(私がもっと、はっきりと言っていたらこうはならなかった?)
別れ話をしたつもりになって、恐怖から逃げるように恭平から逃げ出した。
間違っていたとは思わない。でも、あっていたのかもわからない。
あの時、もっと話し合っていたら何かが変わっていたのかなと。
叫び暴れる恭平を見つめ、彩は翔から離れた。
ゆっくりと呼吸して、意を決して言い放つ。
「恭平。」
時が止まったかのように恭平は口を閉ざし、彩を見つめた。
「……話し合いをする前に逃げてごめんなさい。でももう、私のことは放っておいて。」
彩のことを恭平はただ見つめ。
さっきまでの暴走が嘘のように、彼は地面を見つめ、目的を失ったように連行されていった。