恋のメンテナンスは必要ですか?
 *


 リビングを出て廊下を進み、突き当たりの部屋に案内された。

 扉を開けると広い部屋の真ん中に置かれたダブルベット。
 綺麗に整えられたスタイリッシュな寝室は人の使った形跡が全くなかった。

「彩はこの部屋を使って。俺の部屋は玄関すぐそばの部屋だから何かあったら声かけてね」
 
「この部屋は……?」

「ああ、モデルルーム丸ごと買ったって言っただろ?この部屋の家具とかも全部買ったそのまま。手入れはしてあるからすぐに使えるよ」

 もう何が何だか、世界が違いすぎて言葉も出ない。
 でも急に押しかけたのに部屋を割り振ってもらえるなんて思っていなかった彩は喜ぶ。

「ありがとうございます。明日出て行く時は綺麗に整えておきますね」

「あ、それなんだけど……」

 翔が何かを伝えようとするとどこからか男の人の声で「おーい」と聞こえてきた。
 まだ夕方の心霊現象に驚いて彩は「な、なに?!」と体をこわばらせる。

 翔はすぐに声の正体に気づいたのか眉間に皺を寄せリビングの方を睨んだ。


「また勝手に設定変えたな……!」
「……?」

 翔の怒りの理由はすぐに知ることとなる。


 *


『おーい。しょーう、あやさーんー』

 タブレットサイズのスマートディスプレイから聞こえてくる声に翔は不機嫌そうに返事をした。

「父さん、また勝手に家に入って設定いじったな?」
『ん?ああ。この前行った時にちょっとな。通話が繋がるようにした』
「いい歳になった息子のプライベートを無視するようなことをするなよ』


 声の正体はリビングに置かれたスマートディスプレイから聞こえる翔の父・進の声だった。
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