恋のメンテナンスは必要ですか?
冬は太陽の消える時間が早い。
昼間見た夜景はまるで輝く宝石のように。
暗闇の中で光る輝きたちに目を奪われ、口が塞がらない。
リビングの一面、広がる息を呑むほど美しい夜景に彩は感動した。
「綺麗……」
見惚れるように窓の外を見つめる彩の横顔を見つめる翔。
思いついたのかテーブルに置かれていたリモコンで電気を消した。
「えっ!」
「こうすると、もっと綺麗だよ」
「あ……わぁ……」
光は暗闇で輝きをより一層強くした。
まるで壁一面が夜景の絵画のよう。
「こんな場所に翔さんはいつもいるんですね」
「…………」
「すごいなぁ……私とは」
口から出かけた言葉を止める。
(なにを言おうとしてるの)
夜景を見て感傷的になって、少し泣きたくなった。
なんで泣きたくなったのか——理由は考えたくない。
「ありがとうございます。もう電気つけて大丈夫ですよ。」
彩の傷ついたような表情に翔は目を開く。
触れようと足を進めるが、昼間の出来事を思い出し、止まった。
「……もともとこの家に住むつもりはなかったんだ」
突然、翔は語りだす。
「別にその辺りのアパートでもマンションでもよかった。でも、俺の立場と環境がそれを許さない。セキュリティ面や安全面も考えなければいけない。それが俺の生きている世界だから」
「……はい」
「でも俺は俺だ。もちろん、外見も家柄も、環境も俺の一部で。それでも、貴女には俺自身を見てほしいと……思ってしまうのは我儘だろうか」
翔の言いたいことがわかり、体が熱くなる。
きっとこの人は私が引け目を感じていることに気づいてる。
自分自身に釣り合わないと感じて悲しくなったことに……。
「彩。髪に触れてもいい?」
「え?!」
「……変なことはしないよ」
躊躇しながら彩が顔を縦に振ると、翔の手のひらが彩の髪に触れた。
翔は優しく彩の横髪を撫でる。
「…………」
穏やかで柔らかい瞳。
夜景の光に照らされて見つめ合う。
ロマンチックな瞬間に、心臓の音だけが大きく聞こえた。
「…………ご飯にしようか。」
髪越しに伝わってきていた温もりが離れていく。
電気をつけて翔は後ろを向いたまま。
「作ってもいいけど、今日は外食にしよう。」
「…………はい」
互いにもどかしい気持ちを抱えたまま、夜は更けていった——。