恋のメンテナンスは必要ですか?
第十九話 「会いたい」
洗面所で半分濡れた髪を整え、扉を開ける。
そのままタイルの廊下を進みリビングに入った。
「お風呂、ありがとうございました」
キッチン立つ翔へお礼を伝え、そのまま聞いた。
「ドライヤーの場所がわからなくて、借りてもいいですか?」
「っ……ああ!ごめん!こっち」
ワタワタと彩から目をそらす翔。
その挙動を不思議に思いながら、洗面台へと向かう翔へついていった。
「ドライヤーはこの棚。俺のもあるけど、よかったら彩の化粧水とかもここに置いていいから」
「ありがとうございます。あ、これ!」
「ん?ああ。仕事的に人前に出ることが多いから身だしなみには気をつけてるつもり」
「だから肌も綺麗なんですね。このナイトクリームちょっと気になってたんです。」
「よかったら使ってみる?」
翔はクリームの蓋を開け、専用のスパチュラですくい取り、彩の手に乗せる。
嬉しそうに彩はクリームを顔に乗せ、顔に塗り広げた。
鏡で自分の顔を見つめて気づく。
「はっ!すっぴん……!」
今更。
すっかり忘れていた。
今日一日、すっぴんで過ごしていた。
翔にすっぴんを見られ続けていたことに気づきショックを受ける。
今できることはクリームのついた手のひらを顔に当てて隠すしかなかった。
恐る恐る翔の方を見つめると彼は愛おしそうにこちらを見つめ微笑んでいる。
「彩って、天然?」
「そんな可愛いタイプじゃないです……今日はその、本当にバタバタしていて色々ありすぎたからそれどころじゃなくて……うう……」
居た堪れない。
恥ずかしいのもそうだが、すっぴんを翔に見られたことのがショックだった。
「わ、わたしもう寝ます!」
慌てて自分の寝室に逃げ出そうとした。
けれど。
それより先に目の前を翔が塞いで——
「可愛い」
翔は彩を見つめる。
逃げ出そうとして遮られた道。
恐怖は感じない。
それどころか——心臓が鼓動して、壊れそうだった。
「へ、あっう……ぅ……」
萎むように、彩はその場でうずくまる。
この人は自分がしていることをわかっているのだろうか。
ゆっくりって言ったり、待ってるって言ったり、でも優しく攻めてきたり。
意識しないようにと思っているのに、今日1日だけで何度心臓を高鳴らせてくるのか。
もう——
「キャパオーバーです……」
「えっ?!彩?!ごめん!俺のせいだよな?!」
うずくまる彩の周りで翔が慌てていた。