恋のメンテナンスは必要ですか?
 *


 彩の寝室前で二人は立ったまま話し合う。

「明日は職場まで送っていくから」
 
「そこまでしてもらったら流石に悪いです!」

「俺がしたいから」

 翔の願う表情になにも言えなくなる。
 こういう時に綺麗なこの顔は、本当にずるい。

「我儘言ってごめん、でもこれくらいしかできないから。帰りは迎えに行けなさそうだから車を送るよ。一応、ここの住所もあとで送っておくね」

 彩は諦めて甘えることにした。
 きっと謙遜して断るよりも受け入れた方が喜ばれる。

「……ありがとうございます。」

「うん。……おやすみ」

「おやすみなさい」


 パタリと、扉が閉まる。

 まだ慣れない自分の部屋。
 同じ家に翔がいるのだとわずかな緊張を感じながら、彩はベッドに入った。


 *

 
「お疲れー」
「お疲れ様でしたー」

 仕事終わり。院内で樹は一人浮かない顔をしていた。

「星野くん、どうしたの?」
「三樹(みき)さん……いや、彩が休むなんて初めてなんで」

 樹の様子に察した三樹は「あー確かにね」と考えを巡らせる。
 
「なんで休んだんだっけ?」
「それが……院長が体調不良とは言ってたんすけど。連絡しても返信ないし、なんか腑に落ちないんすよね」
「ふーん?まぁ星野くんがいうならなんか違う理由なのかもね」

 三樹の妙な納得に樹は聞き直す。

「?言っといてなんですけど、なんか俺説得力ありました?」
 
「だって星野くん、彩ちゃんのこと好きでしょ」

「なっ!?」

 樹は顔を真っ赤に染めて体を後ろに下げる。
 狼狽えたまま、パカパカと口だけが動いてしまった。

「わかりやすーい。」
「三 樹 さ ん……!!」

「あっはっはー」

 三樹の一切気にしていない様子に樹は大きくため息を吐く。
< 64 / 121 >

この作品をシェア

pagetop