恋のメンテナンスは必要ですか?
 * 


「おはようございます」

 階段を登り、階段を開ける。
 いつもより早めに出勤した彩はきっと自分が一番だろうと思っていた。

「あれ?樹、早くない?」

 扉の先にはすでに樹がロッカーの前に立っていた。
 気配に気づき振り返る樹。
 彩の顔を見るなり、彼は彩の頭を掴む。

「おーまーえー、連絡に返事しろよ!!心配しただろうが!!」
「痛い痛い痛い痛い!!!ごめんって!色々ありすぎて余裕なかったんだってば!」

 樹はピタッと動きを止め、問い詰めるように目を細めた。

「色(・)々(・)あ(・)り(・)す(・)ぎ(・)て(・)ってお前体調不良で休みだったんだよな……?」

「……エッ」


 院長に連絡はしたが、自分の欠席理由が何になっているのかは知らなかった。
 口走ってしまった言葉に後悔するも、弁解する言葉も浮かばない。

「エットォォ……」

 気まずさに目が横を向く。
 彩のわかりやすい態度に樹はにっこりと微笑んだ。
 

「仕事後、空いてるよな?」
「えっいや、今日は急すぎるというか……」
「ほぉ。一回も休んだことのない友人が急に休んで?心配してずっと返信を待ち続け、仕事もままならなかった友人よりも優先する用事が?」

「…………せめて休み前の日に……」

 樹は険しい顔を一瞬作るも妥協したのか、
 「絶対空けとけよ」と念をおしてきて話を終える。
 
 これだけ人を心配させておいて逃げることは許されない気がした。
 何より申し訳なさで胸が苦しい。

 流れで休み前に夜ご飯へ行くことになったものの、樹になら話してもいいかと思う。
 大学時代からの付き合いの彼は自分の過去も知っている。
 むしろ気兼ねなく話せるのは樹くらいかもしれない。

 そう思ったら少し気持ちが楽になった。
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