恋のメンテナンスは必要ですか?
佐藤三樹。
三樹という苗字のような名前は実は名前で。フルネームで書くと男のような名前だ。
何度名前の漢字だけを見て男と間違えられたかわからない。
幼い当時、女の子らしさは発音にしかないこの名前をどれだけ恨んだか。
今となっては思い出せないが、大人になってしまえば愛着すら湧いてしまっている。
結婚して苗字は変わったものの、苗字が変わったところでこの名前のじじくささが消えることはなく。
相変わらず、名前を書くと男に間違えられていた。
そんな名前をつけられたからだろうか。
私は若い子のあれこれを見ているとキュンキュンと楽しくて仕方ない。
ここ数年のブームは職場の同僚たちの恋模様。
星野くんの恋心に彩ちゃんの鈍感さ、三上さんの敵対心。
それはもう少女漫画のようで面白い。
「まぁ、仕事に支障きたすのはやり過ぎだったから止めたけど」
そんなことをぼやきながらも、今日同僚と話したことを思い出す。
——『なんか今日、星野くんと彩ちゃん変だよね?』
『え゛』
三樹に突っ込まれた樹はカチコチに固まり、せっかく取り出したゴム手袋も床に落としてしまう。
『だって朝から気まずそうにしか話さないし。絶対なんかあったでしょ』
『う゛……べ、別に何も——』
『そんなわかりやすい誤魔化しはいいから。さっさと吐きなさい。』
三樹の好奇心全開の要求に樹は口を閉ざそうとするが先輩からの鋭い眼光に耐えられず、彩との昨夜の出来事を話した。
『やっとじゃん』
三樹は待ち侘びた進展に、にやけてしまいそうだった。
そんな先輩の勝手な心境も知らず、樹は思い悩むように胸の内を吐露する。
『……本当は告白する気なんてなくて……でも彩が男と話す姿に耐えられなくなって……』
後悔しているかのように床を見つめながら話す樹に、三樹は背中をぽんっと叩き、励ました。
『いいじゃん。予想外上等でしょ。』
『言おう、言いたい。そう思った時がタイミングって私は思うね。』
『そう、っすよね』
三樹の励ましに樹はパァッと顔を明るくした。
『俺頑張ります!とりあえず、彩と普通に話せるように……した、いん……すけど』
『あー。避けられてるもんね。』
せっかく伸びた樹の背中がみるみると縮む。
『そうなんすよ……』
『んー……まぁ。どうにかなるって』——
そんな会話をした今日。
三樹は力技で二人の場所をセッティングした。
自宅の駐車場に着き、エンジンを止める。
「でも神崎さんには悪いことしたかなー。」
新患として訪れた、彩ちゃんの知り合い。
どう見ても彼女を意識し、友人の関係には収まらなそうなあのイケメンには悪いが。
「私は星野派なんでね。許してー」
伝わるわけもないのに、三樹は暗い空に向かって謝った。