恋のメンテナンスは必要ですか?
第三十三話 「三上杏菜」
私は性格が悪い。
そんなことは自分でもわかっていた。
いい意味で言えば素直に感情が溢れてしまうこの頭は、私にとって悩みの種。
なんて言ったら非難されてしまうだろう。
わかってるなら努力しろとか、開き直ってるんだろとか。
実際、そうだとも思うから何も言えない。
私は二十歳を過ぎても子供のまま。
*
「ムカつく」
受付の後ろにある小部屋で自分の希望が叶わなかった杏菜は呟く。
先輩の去った後を睨みながら、胸の奥から沸々と湧き上がる黒い感情に飲まれた。
(また彩先輩)
自分よりも年上、しかも可愛さなら自分の方が上だと思う先輩に私は何度負けるのか。
一回目はこの歯科に入社した時だ。
午後から遅れてやってきた樹先輩。
一目見た瞬間に胸が高鳴った。
(好み!!めっちゃ好みのイケメン!!)
心の中の興奮を隠しながら、樹先輩と仲良くなりたくて必死だった。
でも先輩は冷たくて。
嫌でも自分に興味がないことを察した。
そんな先輩が嬉しそうに話しかけていたのは——彩先輩だった。
すぐにわかった。
樹先輩はこの人が好きなんだと。
自分の好きな人に好きな人がいることに気づいてショックだった。
でも、一番ショックだったのは、あんなわかりやすい態度にも気づかず、樹先輩と過ごしていた彩先輩のこと。
(私は樹先輩の視界に入ることもできないのに、この先輩は……)
悔しかった。
だから、ちょっとした腹いせだった。
でももっと悔しくなっただけだった。
敵うことのない大人の余裕。
優しい態度。
私が嫌がらせをしても彩先輩は困ったように眉を下げるだけで。
私はムカつくこの先輩の懐の広さと優しさ。
周りから愛される理由を知っただけ。
そして樹先輩からもっと嫌われただけだった。