『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
咲良がようやく俺を真正面から見た時、いつも冷静な顔にも明らかな焦りが滲んでいた。

「軍釟。第二結界が破られれば、次は中央結界に負荷が集中する。そこまで行けば、冥府門だけの問題じゃ済まない」

「分かってる。俺を何年門番やってると思ってんだ」

「部門長でもあるけど」

「……今なんつった?」

 聞き捨てならない言葉が混じった気がした。

 しかし問い返すより早く、制御室全体へ鋭い警告音が響き渡り、大型画面の一つが真っ赤に染まった。

 第二結界の耐久値が、見る間に落ちていく。

「話はあと。軍釟、上へ行くよ」

「待て。結界はやるけど、さっきの何だよ! 部門長って!」

 中央制御室を飛び出しながら問い詰めると、前を走る咲良は速度を落とすこともなく答えた。

「あんたは部門長なの」

「はぁ!? 俺、門番なんだけど!」

「異世界転生部門長兼、門番」

「兼って何だよ! 聞いてねぇぞ!」

「その話はあと! 先に結界!」

 言われて見上げれば、頭上を覆う巨大な結界の表面には亀裂が走り、そのたびに白い光が激しく明滅している。

 確かに今は、俺が知らない間に部門長へ昇格させられていた件を追及している場合ではない。

 とはいえ、絶対にあとで聞く。

 
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