『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
そして、その膨大な仕事を担っている場所がある。

 その名も――冥府庁。

現世、天界、魔界、さらには数え切れないほど存在する異世界まで、あらゆる世界で命を終えた魂を受け入れ、その先へ送り出す巨大な組織である。

冥府庁へ辿り着いた魂は、まず本人確認を受ける。

生前の名前や年齢、出身世界、死亡時の状況、生前の記録、そして魂そのものに刻まれた履歴。それらを一つずつ照合し、必要であれば調書を取り、審査を行ったうえで、それぞれの案件に適した部門へと送られていく。

通常の死を扱う者がいれば、死神を統括する者もいる。輪廻転生を管理する者、別の世界へ生まれ変わる魂を扱う者、召喚に関する案件を処理する者、天界へ向かう魂を管理する者、地獄で刑を受けるべき魂を扱う者。

ほかにも魂籍を管理する者や、蘇生や現世への返還を審査する者、現世そのものを監察する者、魔界との調整を担う者がおり、そのどれにも当てはまらない特殊案件まで、それぞれ専門の部門が受け持っている。

一見すると、実に整然とした組織のように思える。

だが、実際はそんなに綺麗なものではない。

なぜなら、死んだ人間というものは、案外素直ではないからだ。

自分は王族だったと言い張る者もいれば、伝説の勇者だったと胸を張る者もいる。生前の功績を盛る者、都合の悪い記憶を忘れたふりをする者、死んだ理由を誤魔化そうとする者。

さらには、自分がどの世界から来たのかすら、まともに説明できない者までいる。

< 2 / 54 >

この作品をシェア

pagetop