『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

第一話 ――門番って、こんなに面倒な仕事だったか?――

 俺の仕事は、毎日ここへ流れ着く魂が、いったい何処の、どの世界から来たのかを確認するところから始まる。

 異世界転生というものは、当然ながら元いた世界を離れ、別の世界へ生まれ直すことだ。言葉にしてしまえば簡単だが、実際の手続きはそう単純ではなく、まずは目の前の魂が何処から来たのかを特定しなければ話にならない。

 現世なのか、魔界なのか、それとも数え切れないほど存在する異世界のどこかなのか。そこから生前の記録を照合し、死亡時の状況を確認して、異世界転生の対象として問題がないかを調べたうえで、ようやく次の行き先を決めることになる。

 これが案外――いや、かなり面倒くさい。

 何しろ、本人ですら自分が何処の世界から来たのか分かっていないことがある。死んだ直後で混乱しているならまだ分かるが、中には堂々と嘘をつく奴もいれば、妙なところで見栄を張る奴までいるのだから始末が悪い。

「前世では王族でした」

 そう胸を張った奴を調べてみれば、ごく普通の商人だったり、「俺は伝説の勇者だ」と豪語した奴が、勇者どころか生まれ育った町から一歩も出たことがなかったりする。

 逆に、本当に勇者だった奴ほど余計なことは何も言わず、妙に疲れ切った顔で黙々と調書を書いていたりするのだから、この仕事は余計にややこしい。

 そんな連中の話を最初から最後まで、いちいち真に受けて聞いていられるかと毎日のように思うものの、聞かなければ仕事にならない。

 だから今日も俺は、異世界転生門の前に設けられた受付机に座り、目の前の魂が差し出してきた調書を眺めながら、深い溜息を吐いていた。

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