『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
中央会議室へ戻ると、昨日とほぼ同じ顔ぶれがすでに円卓を囲んでいた。

 冥府長官・咲良(さくら)を中心に、通常死亡案件部門長・轟由羅(とどろき)、輪廻転生管理部門長・高尚(こうしょう)、召喚管理部門長・東仙(とうせん)、天界部門長・東陵(とうりょう)、地獄刑執行部門長・燦錕(さんこん)、魂籍管理部門長・紫龍(しりゅう)、蘇生・返還審査部門長・天啓(てんけい)、現世監察部門長・間遁(まとん)、魔界連絡調整部門長・砂紋慈(さもんじ)、その他特殊案件部門長・寒山(かんさん)。

 そして、昨日空席だった死神部門長の席へ窓路が座った瞬間、全員の視線が一斉に集中した。

 重い。

 そりゃそうだ。

 昨日、こいつの部門が丸ごと消えたせいで、全員酷い目に遭った。

「……何だ」

 窓路が平然と言う。

 轟由羅のこめかみに青筋が浮かんだ。

「何だ、じゃないわよ」

「戻ってきた」

「見れば分かるわ!」

 高尚まで腕を組む。

「死神部門二千五百名、全員で職務停止。第一冥府門は突破、第二結界も崩壊寸前。もう少し遅ければ中央結界まで持っていかれていた。説明はあるんだろうな」

「ある」

「なら早く話せ」

 俺も同意だった。

「そうだ。朝から家族全員天界まで連れて行かれて、双子の兄がいたとか、親父と母さんが昨夜何時間暴れたとか、関係あるんだかないんだか分かんねぇ情報ばっかり増えてんだよ。早く本題に入れ」

 会議室が一瞬、静かになった。

 咲良がゆっくり俺を見る。

「……何時間?」

 しまった。

「そこ拾わなくていい」

 轟由羅が食いつく。

「昨日、天界で揺れたって聞いたけど」

 東陵が深い溜息を吐いた。

「その件については、天界部門から正式に苦情を申し上げたい」

「俺に言うな!」

「螺良様と沙羅麻様へです」

「本人に言ってくれ!」

 東陵は疲れた顔で資料を開いた。

「昨夜から今朝にかけて、天界各所で断続的な魔力振動を確認。職員の睡眠障害、眩暈、吐き気、軽度の魔力酔いが多数発生しております」

 咲良の目が細くなる。

「……螺良様」

 親父は今日、この会議室にいない。

 だから俺を見るな。

「俺、関係ねぇからな」

「でも、あなた事情知ってるでしょ」

「知りたくなかったことまでな!」

 高尚が興味深そうに聞いてくる。

「何があったんだ」

「聞くな」

「余計気になるだろ」

「夫婦喧嘩して仲直りした。それ以上は聞くな!」

 一瞬の沈黙。

 そして全員が、何となく察した顔になった。

「……ああ」

「察するな!」

 
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