『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
燦錕が腕を組んだまま、感心したように呟く。

「さすが螺良様」

「何が『さすが』なんだよ!」

 紫龍が淡々と言った。

「天界を揺らす規模という意味では」

「分析すんな!」

 咲良が額を押さえた。

「もういいわ。その件はあとで螺良様と沙羅麻に正式に注意する」

「母さんにはタメ口なんだな」

「同級生よ。今さら敬語なんて使わないわ」

 そうだった。

 母さんと咲良は三百歳の同級生で、幼い頃からの付き合いだ。

「ってことは咲良も三百――」

「軍釟」

 咲良の声が一段低くなった。

 俺は黙った。

「……何も言ってない」

「今、言おうとしたでしょう」

「気のせい」

 すると、どこかから親父の声でも聞こえたかと思うほど自然に、高尚が口を滑らせた。

「沙羅麻様と同い年なら三百――」

「高尚」

「はい」

 全員、学習しろ。

 年齢の話は地雷らしい。

 俺は椅子へ深く座り直し、ようやく窓路へ視線を戻した。

「もういい。本当に本題入れ」

 咲良も頷く。

「そうね。窓路、説明して」

 窓路はしばらく黙っていたが、やがて手元の端末を操作し、円卓中央へ一つの立体映像を映し出した。

 冥府庁を中心に、そこから現世、天界、魔界、死神界、地底界、そして無数の異世界へと伸びる複雑な光の経路。

 魂の流れだ。

「昨日の件は、突発的に始めたボイコットじゃない」

「それは分かってる」

 間遁が即座に返す。

「数日前から死神部門に準備行動があった」

「そうだ」

 窓路が表示を拡大する。

「もっと前から、魂の流れに妙な消失点があった」

 
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