『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
咲良が何とも言えない顔で俺を見る。

「否定できないのが嫌ね」

「だろ?」

「でも、まず木魂様を見つけないと」

「どうやって」

「普通に捜索」

「見つかると思う?」

 全員黙る。

 思わないらしい。

 木魂おじさんは妙なところだけ器用だ。本気で隠れれば、親父ほどではないにせよ簡単には見つからない。

 すると寒山が静かに手を上げた。

「呼び出せばいいのでは」

「連絡に出ない」

 窓路が答える。

「本人向け通信は遮断されている」

「なら、本人が無視できない内容で庁内放送すればいいでしょう」

 俺は寒山を見る。

「例えば?」

 寒山は少し考え、真顔のまま言った。

「木魂様が死んだ、とか」

「それ本人が聞いても出てこねぇだろ!」

「では、螺良様が倒れた」

「ありそうで困る!」

 轟由羅が面白そうに身を乗り出した。

「緑子様が怒ってる、とか?」

「それは逆に逃げるんじゃない?」

 紫龍が淡々と返す。

 いつの間にか、会議が完全に別方向へ進み始めていた。

 咲良が止めるかと思ったが――止めない。

 むしろ考えている。

「……普通の呼び出しでは来ないでしょうね」

「咲良まで乗るのかよ」

「捕まえるためよ」

 そういう問題か?

「じゃあ」

 高尚が腕を組んだ。

「いくつか案を出して、一番反応しそうなものを選べばいい」

「採点でもすんの?」

 俺が冗談で言ったのに。

「いいですね」

 咲良が即答した。

「マジで?」

 どうしてこうなった。

 そこから何故か、「木魂を炙り出す緊急放送案選手権」が始まった。

 まずは咲良。

『木魂様、至急中央会議室へ。重要案件です』

「十点」

 俺が即答する。

「低っ!」

「普通すぎる。絶対来ない」

 次は高尚。

『木魂様の職位を一時停止します』

「五十点」

「半分か」

「ちょっと気にはするだろ」

 轟由羅が笑いながら続ける。

『緑子様がお怒りです』

「四十五」

「何で下がったのよ」

「逃げる可能性ある」

 間遁。

『魂流出案件について全容を把握しました』

「六十五」

「現実的だな」

 天啓。

『木魂様、緑子様との関係が全庁に共有されました』

「七十」

「嫌だろ、それ」

 燦錕。

『木魂様、螺良様より強制召喚命令』

「八十」

「それなら一瞬迷う」

 紫龍が真顔で言った。

『緑子様、別の男性と婚約』

 俺は即答した。

「九十五」

「高い」

「絶対出てくるだろ!」

 寒山は少し考えてから、淡々と言った。

『木魂様、緑子様が別の男と結婚し、螺良様が倒れ、死神部門が全滅しました』

「百点」

< 63 / 89 >

この作品をシェア

pagetop