『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
俺はゆっくり窓路を見る。

 窓路も装置を見る。

「……何だこれ」

「お前が聞くな!」

 轟由羅が机へ突っ伏した。

「無理……!」

 高尚は顔を背けて肩を震わせ、咲良ですら口元を押さえていた。

 そこへ、母さんから通信が入った。

『ちょっと窓路〜! もっとギャルっぽく言いなさいよ〜!』

「母さん、何で聞いてんだよ!」

『聞こえたから』

「天界まで届いてんの!?」

『でも今の、まだ甘いわねぇ。“死神みーんな死んじゃったぁ♡ ウケる〜♡”くらい言わないと』

「何を指導してんだ!」

 窓路は真顔で装置を見る。

「壊れてるな」

「今気づいたのか!」

 その時、通信が一本入った。

 古衣留だ。

『軍釟さん』

「どうした」

『さっきの放送なんですけど』

「聞こえた?」

『はい。普通でしたよ』

 俺は止まった。

「……普通?」

『「緊急。木魂様行方不明。螺良様、沙羅麻様の逆鱗に触れ倒れる。死神部門、全員死亡。冥府界、現在迷走中」って普通の声で』

 会議室全員が装置を見る。

「じゃあ何で俺たちにはあれだったんだよ」

 窓路が装置を裏返す。

 小さな文字が書いてある。

『受信者の心情に応じ、自動演出』

 その下。

『心が荒んでいる者には娯楽変換機能あり』

「…………」

 俺は無言になった。

 咲良も。

 各部門長も。

「つまり」

 轟由羅が顔を上げる。

「私たち全員、心が荒んでる判定?」

「昨日のせいだろ!」

 絶対そうだ。

 そういうことにしてくれ。

 笑いが収まるまで、しばらくかかった。

 だが、それから十分もしないうちに、中央会議室の扉が静かに開いた。

 全員の視線が向く。

 そこに立っていた男は、何事もなかったような顔をしていた。

 冥府庁官房長官・木魂(こだま)。

 見た目だけなら、どう見ても四百歳には見えない。若々しく、中性的で、どちらかといえば可愛らしいと言った方が近い顔立ちをしている。

 本人は、のそのそと会議室へ入ってきた。

「……全滅って何?」

 俺は思わず立ち上がる。

「来たぁぁぁ!」

 木魂おじさんがびくっとする。

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