『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
「はっ、何だ、神楽」

『大変だと思うけど、健闘を祈るよ』

「おい、嫌な予感しかしないぞ」

『うん。僕もそう思う』

「分かってるなら説明しろ!」

『その方が面白いから』

「神楽!」

 神楽は返事をしなくなった。

 何なんだよ。

 俺は念のため、結界を少し強める。

 咲良がこちらを見る。

「何」

「神楽が『三発来る』って」

「三発?」

 母さんが顔を上げる。

「神楽が?」

「ああ」

 母さんの表情が少し変わった。

「……軍釟、構えておいた方がいいかも」

「母さんまで?」

「神楽がそう言う時は、大抵何か来るわ」

「何が来るんだよ」

 答えが返るより早かった。

 中央会議室の天井――正確には、その上にある採光用の天窓が、突然まばゆい光を放った。

「何だ!?」

 全員が見上げる。

 光は金色に輝き、やたらと細かい光の粒まで舞い始めた。

 そして、その中心から一人の男が両手を広げながら、ゆっくりと降りてくる。

「ジャジャーン!」

 親父がいないのに、どこからか「あちゃー」という声が聞こえた気がする。

 咲良の顔色が変わった。

「軍釟!」

「何!」

「早く拘束して!」

「誰!?」

「いいから!」

 言われるがまま、俺は指を動かした。

「拘束」

 金色の強化拘束紐が一気に空中へ伸び、まだ降りている途中の男へ巻きつく。

「お?」

 腕、足、胴。

 念のため口以外全部。

 さらに、そのまま強制的に拘束椅子まで召喚し、空中から降ってきた男を会議室のど真ん中へ座らせた。

「何するんじゃ!」

「こっちが聞きたい!」

 男は拘束されながら、何故か楽しそうだった。

「酷いじゃないのー。ワシを忘れてただろ」

「知らねぇよ!」

「軍釟」

 咲良が低い声で言う。

「その方は権蔵様」

「誰」

「冥府界創設者」

「……は?」

「前・閻魔大王」

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