『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
 俺は男を見る。

「前?」

 権蔵と呼ばれた男は、にっこり笑った。

「そうじゃよ〜。ワシ、昔は閻魔大王やっとった」

「何でこんな軽いんだよ!」

 咲良が頭を抱えている。

「それだけじゃないわ」

「まだあるの?」

「私の父」

「……は?」

 俺は咲良を見る。

 咲良も俺を見る。

「父親?」

「そう」

 もう一度、権蔵様を見る。

 見えない。

 全然似てない。

「何歳?」

「千歳」

 権蔵様が即答した。

「本当に?」

「ワシはいつでも千歳じゃ」

「それ、絶対適当だろ」

 母さんが楽しそうに手を振る。

「権蔵様、お久しぶりです」

 権蔵様の顔がぱっと明るくなる。

「沙羅麻ちゃーん! 今日もかわいいなぁ!」

「ありがとうございます」

「母さん、知り合い?」

「もちろん」

「何で俺だけ何も知らないの」

「あなた興味なかったでしょう?」

 それはそうかもしれない。

 権蔵様は俺を無視して母さんを眺め、急に顔をしかめた。

「しかし昨日は酷かったぞ。ワシ寝られんかった」

 俺は嫌な予感がした。

「何で?」

「天界揺れすぎじゃ! ちょっと様子見に行ったら気持ち悪くなったわ!」

「わざわざ行くなよ!」

 母さんが笑う。

「権蔵様、いらしてたんですか?」

「途中までな」

「何見たんだ!」

「軍釟、聞かない方がいい」

 咲良が真顔で止めてくる。

 俺もそう思う。

 権蔵様は次に緑子さんへ顔を向けた。

「緑子、久しぶりじゃな」

 緑子さんが僅かに頭を下げる。

「お久しぶりです、権蔵様」

「お前、まだ木魂とやっとるのか」

「はい」

「子ども欲しいからって魂の力まで引っ張るとは、相変わらず発想が雑じゃな」

 緑子さんの眉がぴくりと動く。

「何ですって」

「若返り、魔力強化、繁殖力強化。全部同時にやる。センスが無いな」

「権蔵様」

「見込みなし」

「喧嘩売ってます?」

「絶世の美女でも、そこを力任せに弄ってどうする」

「もういい!」

 咲良が止めた。

「父さん、今はその話じゃない!」

「咲良ちゃん怒った」

「誰のせい!」

 俺は額を押さえる。

 神楽。

 これ一発目?

 あと二発来るの?

 嫌なんだけど。

 
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