『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
権蔵様は突然、拘束されたまま顔を上げた。

「ところで、お前ら」

「何」

 俺が聞くと、権蔵様は天井を見た。

「盛り上がるのは良いが、防御し過ぎて周り見えてないだろ」

 全員が黙る。

「あと十秒後に揺れるぞ」

「は?」

「そして来るぞ〜」

「何が!」

「九」

「数えるな!」

「八」

「おい!」

「七」

 咲良が立ち上がった。

「全員、周囲確認!」

 母さんも魔力を広げる。

「……本当。下から来るわ」

「下?」

「五」

 権蔵様が楽しそうに続ける。

「四」

 俺は一瞬、結界をさらに強めようとして止まった。

 権蔵様の言葉を思い出す。

 防御し過ぎ。

 つまり、外側を固めすぎて内側の変化を拾えていない。

「結界、外周だけ少し緩める!」

 窓路がこちらを見る。

「軍釟の制御ではないな?」

「違う! 防御結界の話だ!」

「三」

 母さんも同時に防御範囲を調整する。

「二」

 床が鳴った。

 ズズズズズズ……。

「一」

 ドンッ――!

「いらっしゃーい! まいどありー! お待たせ〜! ふざけんなよ! 何が死神死亡だよー!」

 床が割れた。

「何で地下からぁぁぁ!」

 土煙とともに飛び出してきた男は、着地と同時に両手を広げた。

「俺様、地底界の王! 天寵(てんちょう)でーす!」

 誰も反応しない。

「……ヤッホー!」

 さらに反応なし。

「おい、もう少しリアクションないの?」

 俺は頭を抱えた。

「二発目これかよ……」

 
< 75 / 89 >

この作品をシェア

pagetop