『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
その最中、階段を駆け上がってきた職員が、顔色を変えたまま俺のところへ飛び込んでくる。

「軍釟さん! 第一冥府門が突破されました!」

「結界は?」

「押し切られました! 魂が一気に流れ込んでます!」

 もう一度下を覗き込んだが、魂の流入は止まるどころか、時間が経つほど勢いを増している。

「死神は何してる」

 そう聞いた瞬間、職員の表情が露骨に引きつった。

「それが……誰もいません」

「……は?」

「死神部門の詰所も魂搬送所も、全部です。誰もいません」

 何を言われたのか理解するまで、ほんの数秒かかった。

 死者の魂を回収し、冥府へ導くことこそ死神部門の仕事だ。その死神が誰もいないなど、冗談で済む話ではない。

窓路(まどろ)は?」

「死神部門長もいません。死神部門全体がボイコットしてます」

「……全員?」

「はい」

 思わず目を閉じた。

 聞き間違いであってほしかったが、下を見れば魂の大洪水が現実を嫌というほど突きつけてくる。

「仕事放棄するなら、せめて事前に言えよ!」

 怒鳴ったところで状況が変わるわけもなく、再び庁舎全体が大きく揺れた。

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