『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
 別の通信。

『通常死亡案件部門です! 死神が廊下を埋めています!』

 さらに別。

『魂籍管理部門、通路封鎖されました!』

『地獄刑執行部門にも入ってきています!』

『どこへ誘導すればいいんですか!?』

「待て待て待て!」

 俺は頭を抱えた。

 地底界にいた二千五百人の死神が、境界不安定化の影響で冥府側へ押し出されている。

 そりゃ混乱する。

「窓路!」

「俺も戻る」

「緑子さん!」

 緑子さんが顔を上げる。

「何だ」

「すみませんが、死神部隊の統率お願い出来ますか?」

 少し意外そうな顔をされた。

「私に?」

「女王でしょ。窓路と一緒に二千五百人まとめてください。このままだと各部門が潰れる」

 緑子さんは数秒だけ俺を見たあと、にやりと笑った。

「よかろう」

「助かります」

 窓路も立ち上がる。

「俺も行く」

「頼む」

 俺は次々に役割を振る。

「轟由羅、高尚、紫龍、燦錕、東仙、間遁、天啓、砂紋慈、寒山、東陵! 全員、自分の部門へ戻って現場立て直し!」

「了解!」

「咲良!」

「何」

「全体調整頼む!」

「任せて」

「母さん!」

「はーい」

「天界戻って、向こう側の境界安定させて!」

「えー」

「えーじゃねぇ!」

「分かったわよ」

「親父!」

 通信を飛ばす。

 数秒後。

『何だ』

「冥府門側の防御頼む!」

『俺?』

「閻魔大王だろ!」

『はいはい』

「天寵!」

「俺様?」

「地底界側の継ぎ目押さえろ!」

「任せろ!」

 雁字が指を鳴らす。

「天寵の拘束も全部解いてやれ。働いてもらう」

「え」

 天寵が固まる。

「お前も関係者だろ。皆の責任だ」

「俺、場所貸しただけなんだけど」

「貸した結果、圧が掛かっとる」

「はい」

 妙に素直になった。

 俺は拘束を解除する。

 天寵はそのまま床へ潜るように消えていった。

< 82 / 89 >

この作品をシェア

pagetop