『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
「木魂おじさん!」

「何」

「俺と来い」

「どこ」

「境界!」

「俺も?」

「おじさんが弄った魂経路、元に戻せるの誰だよ!」

「……俺」

「じゃあ来い!」

 木魂おじさんが渋々立ち上がる。

 その時だった。

 横に立つ人影が目に入った。

 俺は止まる。

「……待って」

 権蔵様。

 立ってる。

 普通に。

「権蔵様の拘束、いつ外した?」

 権蔵様がにっこり笑う。

「みんなに働け働け言っとる間じゃ」

「は?」

「誰もワシのこと見とらんかったじゃろ。だから外した」

「自分で外せるのかよ!」

「普通に外せるぞ」

「じゃあ何でずっと縛られてたんだよ!」

 権蔵様は胸を張った。

「見られとったからじゃ」

「意味分かんねぇよ!」

 咲良が額を押さえた。

「父さん……」

「何じゃ」

「あとで話があります」

「怖っ」

 俺はもう相手にするのをやめようとした。

 すると木魂おじさんが自分の腕を見た。

 それから足。

 また腕。

「……俺の拘束は?」

「は?」

「俺も解いてもらうのかなって」

「木魂おじさん、最初から拘束されてないけど」

 木魂おじさんが固まった。

「あっ、そうだった」

 雁字が息子を見る。

 長い沈黙。

「お前は何でそんなに抜けてるんだ」

「父さん」

「お前、本当に頭いいのか?」

「技術は」

「普段が駄目すぎるだろ」

「そうかな」

 雁字が深く溜息を吐いた。

「やっぱりお前はアンポンタンだ」

「酷い」

「事実だ!」

 俺は何も言えなかった。

 技術だけなら本当に冥府庁でも上位なのに、何で普通のことになるとこうなるんだ。

「軍釟」

 木魂おじさんがこっちを見る。

「何」

「行く?」

「行くよ!」

 俺たちは会議室を出ようとした。

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