『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
 そこで雁字と権蔵様が、何故か並んで座り始める。

「待て」

「何じゃ」

「爺さん達、何してんの」

 雁字が笑う。

「俺たち隠居組は魔力の制御も隠居よ」

 権蔵様も頷く。

「そうじゃそうじゃ」

 俺は二人を見る。

 周囲では、普通に魔力がバチバチと漏れている。

「ふざけるなよ!」

「何じゃ」

「使えるだろ! 普通にバチバチ感じるぞ!」

 雁字が視線を逸らす。

「気のせい」

「気のせいじゃねぇ!」

 権蔵様まで窓を見る。

「若い者に任せるのも大事じゃ」

「若い者って俺!?」

「若いじゃろ」

「冥府基準ならそうだけど!」

 俺は思わず叫んだ。

「俺、門番のはずだったんだけどな! 気付いたら部門長だし、一番若手なのに指揮とって働いてるし、割に合わなくないかぁ!」

 咲良が通りすがりに言う。

「手当の件はあとで見直す」

「絶対だからな!」

 雁字が笑う。

「頑張れ若者」

「爺さんも働け!」

 その時、地面がもう一度大きく揺れた。

 空中に浮かぶ残り時間は、一時間五十二分。

 余裕はない。

 俺は自分の足首を見る。

 片側は、すでに親父に解除されている。

 これ以上は嫌だった。

 本当に嫌だった。

 けれど、このままでは間に合わない。

 俺は通信を開いた。

「親父」

『何だ』

「……全開放して」

 一瞬、向こうが黙った。

『いいのか?』

「本当は嫌だけど、仕方ないだろ」

 少しだけ息を吐き、境界を走る無数の亀裂へ目を向ける。

「最後までやる。残ってる方も外してくれ」

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