『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
 そこから先は、冗談を言っている余裕などほとんどなかった。

 冥府、死神界、地底界、天界。

 四つの層を繋ぐ境界線には細かな亀裂が無数に走り、一つを塞いでも別の場所から圧が逃げていく。

 力任せに閉じれば、今度は別の世界が歪む。

 だから必要なのは、押さえ込むことではない。

 縫い直すことだった。

「木魂おじさん!」

「分かってる!」

 木魂おじさんは、いつもの抜けた雰囲気を完全に消し、魂循環の術式を高速で組み直していく。

 さっきまで「あ、そうだった」とか言っていた人とは思えない。

「第三経路戻す!」

「そこ一気に戻すな! 地底側へ圧行く!」

「じゃあ分割!」

「そう!」

 俺は境界そのものへ魔力を這わせ、亀裂を一本ずつ捉えながら、切れた防御術式同士を繋ぎ、崩れた継ぎ目を元の位置へ戻していく。

 遠くからは、雁字と権蔵様の魔力が広がった。

 二人の力は、さすが創設者だった。

 さっきまで「隠居」とか言っていたのが嘘みたいに、雁字は上層と天界側へ繋がる境界を、権蔵様は冥府側の基礎と空間構造を、それぞれ外から押さえ込むように固定していく。

『軍釟、外側は押さえたぞ』

「助かる!」

『久しぶりに働いたわい』

「まだ終わってねぇ!」

 天界側から母さんの声が入る。

『軍釟〜、こっちは安定してきたわよ〜』

「了解!」

 地底界からは天寵。

『地底界も持ってるぞー! 俺様働いてるぞー!』

「うるさいけど助かる!」

 死神界側では緑子さんと窓路が二千五百人の死神を再編し、分散配置を進めている。

『軍釟、死神部隊の移動完了。境界付近から退避させる』

 窓路。

「了解!」

『こちらも安定した』

 緑子さん。

「ありがとうございます!」

 親父は冥府門側。

『軍釟、門は全部押さえてる』

「珍しく働いてるじゃん!」

『失礼だな!』

 咲良は中央から全てを統括していた。

『軍釟、残り四十九分。境界安定率七十八パーセント』

「木魂おじさん!」

「第六経路復旧!」

「第七!」

「今やる!」

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