総長の、夜よりもあぶない溺愛。
どれくらい眠っていたのか分からない。

ふと目を覚ますと、部屋はすっかり深夜の静けさに包まれていた。
薄暗い中で最初に見えたのは、すぐそばにいる蓮の姿だった。

「……あ」

目が合う。

蓮は床ではなく、いつの間にかベッドの横にひざをついていた。
紗月が起きたことに気づくと、その目元が少しだけやわらぐ。

「起きたか」

「蓮くん……ずっと、ここにいたの?」

「ああ」

短い返事。
でも、その声は眠っている紗月を起こさないようにしていたみたいにやさしい。

「寝てないの……?」

「少しは目ぇ閉じた」

たぶん嘘だ。
ずっと見ていてくれたんだと分かって、紗月の胸がきゅっとなる。

「どうして……」

そう聞くと、蓮は少しだけ黙った。

そして、紗月の髪にそっと触れる。

「おまえが起きた時、ひとりだったら不安になるだろ」

そのひと言だけで、胸がいっぱいになる。

紗月は毛布の中で少しだけ手を動かした。
すると蓮がその小さな動きに気づいて、自然に手を重ねてくる。

あたたかい。
大きな手に包まれた瞬間、また安心してしまう。

「……安心する」

紗月が正直に言うと、蓮の目が少しだけ細くなる。

「俺も」

「え……?」

「おまえがちゃんとここにいるって分かると、安心する」

夜の静けさの中で聞くその言葉は、昼よりずっと甘かった。

蓮はつないだ手を見つめながら、ぽつりと言う。

「今日、かなり焦った」

「蓮くんが?」

「ああ」

信じられない思いで見上げると、蓮は少しだけ苦く笑う。

「おまえのことになると、余裕なくなる」

そんなの反則だと思う。
クールで何でも動じなさそうな蓮が、自分のことで焦ったなんて。

紗月の心臓がまた大きく鳴る。

すると蓮は、つないだ手を少しだけ引き寄せた。

「紗月」

呼ばれて、紗月は息を止める。

「今、この部屋から出したくない」

真夜中の低い声は、昼よりずっと危険だった。

でも怖くない。
むしろ、その言葉がうれしくてたまらない。

紗月が何も言えずにいると、蓮はそっと額に触れそうな距離まで近づく。

「……だめか」

その聞き方はずるい。
こんな顔をされたら、首を振れるわけがない。

紗月は小さく、小さく首を振った。

それを見た蓮は、ようやく少しだけ安心したみたいに息をついた。

「よかった」

その声があまりにもやさしくて、紗月はまた胸の奥が熱くなる。

深夜の部屋。
薄暗い静けさ。
つながれた手。
近すぎる距離。

危険な町の真ん中で、いちばん安全なのが蓮のそばだなんて、少し前までは思いもしなかった。

そしてこの夜はまだ終わらない。
蓮の溺愛は、ここからもっと深くなっていく。
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