総長の、夜よりもあぶない溺愛。
しばらくして、蓮がようやく少しだけ体を離した。
でも完全には離れず、片腕はまだ紗月の腰に回ったままだ。

「……あの、これもまだ必要?」

「必要」

「即答……」

「逃げそうだから」

「逃げないよ!」

紗月がむっとして言うと、蓮はやっと少しだけ笑った。

「じゃあその顔やめろ」

「どんな顔?」

「今すぐどっか隠れたいですって顔」

図星すぎて、紗月は何も言えなくなる。

蓮はそんな紗月を見て、指先でそっと頬に触れた。

「赤い」

「蓮くんのせいだもん」

「知ってる」

あっさり認められて、さらに恥ずかしい。

その時、部屋の外から軽いノック音が響いた。

「総長、生きてる?」

相沢の声だった。

紗月の肩がびくっと跳ねる。

「れ、玲央くん!?」

「声でかい」

蓮が少しだけ眉を寄せる。

さらに続けて、白石の笑い声も聞こえた。

「朝メシ持ってきたぞー。ついでに総長の重すぎる溺愛も見物しに来た」

「白石、うるさいです」

神崎の落ち着いた声も重なる。

そして最後に、桐生の低い声。

「紗月さん起きてるなら、余計に開けない方がいい」

その一言で、外が一瞬静かになる。
たぶんみんな想像したのだ。紗月が今どんな状況かを。

紗月は一気に顔を真っ赤にした。

「む、無理無理無理……!」

ベッドの上で小さく丸まりそうになると、蓮が肩を震わせた。

「……笑った?」

紗月がじとっと見る。

「少し」

「ひどい……」

でもそんなやりとりすら、どこか甘い。

蓮は紗月の頭を軽く撫でてから、ドアのほうへ向かって低く言った。

「入ってくんな」

「はーい」

相沢の声は完全に面白がっている。

「総長、朝から独占欲強すぎ」

白石も楽しそうだ。

神崎はため息まじりに言う。

「黒瀬さんが落ち着くまで待ちます」

桐生は短く付け足す。

「総長、顔やばい」

「うるせぇ」

ドア越しにまで分かるくらい、蓮は不機嫌そうなのに。
紗月には、その不機嫌すら少しうれしく感じてしまう。

だってそれは、自分を大事にしてくれている証拠みたいだったから。

蓮はもう一度紗月のほうへ戻ると、そっと前髪を整えた。

「落ち着いたら出るぞ」

「……うん」

「腹減ってるだろ」

「ちょっとだけ」

「じゃあ、あと少ししたら飯」

その言い方がまるで恋人みたいで、紗月の胸がまた熱くなる。

朝の光の中でも、蓮はやっぱり危険なくらいかっこいい。
でも今はそれ以上に、やさしさのほうが近くにあった。

そして紗月は気づき始めていた。
この町がどれだけ危険でも、自分はもう蓮のそばから離れたくないと思い始めていることに。
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