総長の、夜よりもあぶない溺愛。
朝ごはんが進む中でも、蓮の特別扱いは止まらなかった。

紗月が取りにくそうにしていると先に取ってくれる。
飲み物が少なくなると、何も言わずに足してくれる。
少しでもぼんやりしていたら、すぐに「無理するな」と声をかけてくる。

そのたびに幹部たちの視線が集まる。

「総長、過保護の限界突破してる」

相沢が笑う。

「もう保護者だろこれ」

白石もにやにやしている。

神崎は静かにお茶を飲みながら言う。

「黒瀬さん、大変ですね。愛が重い人なので」

「神崎」

蓮がじろりと見る。

「事実です」

桐生は紗月を見て、短くつぶやく。

「慣れた方がいい」

「えっ」

「もっと増える」

紗月は思わず蓮を見る。
すると蓮は平然とした顔でパンをちぎりながら言った。

「増えるな」

「認めた!」

白石が爆笑する。

紗月はもう何度目か分からないくらい真っ赤になる。
でもその時、蓮の指先がテーブルの下でそっと手にふれた。

びくっと肩が揺れる。

「れ、蓮くん……」

「顔、また赤い」

そう言う蓮のほうがずるい。
みんなの前なのに、そんなふうに静かに触れてくるなんて反則だ。

「からかわれてるから……」

小声で言うと、蓮は少しだけ目を細めた。

「嫌ならやめさせる」

「……嫌じゃない」

気づけば、そんな言葉が出ていた。

蓮の動きがぴたりと止まる。
幹部たちも、その小さなひと言を聞き逃さなかった。

「へぇ」

相沢が意味ありげに笑う。

「黒瀬さん、強いですね」

神崎も少しだけ口元をゆるめる。

白石は楽しそうに身を乗り出した。

「今の総長に効いたな」

桐生は静かに結論だけ言う。

「落ちた」

「桐生」

蓮の声は低いのに、どこか余裕がなかった。

紗月は恥ずかしくてたまらないのに、胸の奥はあたたかかった。
こんなふうにみんなの前で大事にされるなんて、少し前の自分には想像もできなかった。

その時、不意に相沢のスマホが震えた。

軽い空気が、一瞬で変わる。

相沢の目から笑みが消える。

「……総長」

その呼び方だけで、部屋の空気が張りつめた。

蓮の表情もすぐに変わる。

「何だ」

相沢は画面を見たまま、低く言った。

「昨日の連中、やっぱりまだ諦めてない」

朝のぬくもりが、一気に遠ざかる。

白石の目つきが鋭くなる。
神崎は静かに立ち上がり、桐生はすでに次を考えている顔だった。

蓮だけが、紗月の手をそっと握る。

「……安心しろ」

その低い声は、どんな時よりも頼もしかった。

「今度は絶対、先に守る」
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