総長の、夜よりもあぶない溺愛。

第五章

蓮に隣の椅子を引かれて、紗月は少し照れながら腰を下ろした。

テーブルを囲むのは、宵闇の総長と四人の幹部。
さっきまで朝ごはんを囲んでいたとは思えないほど、部屋の空気は真剣だった。

相沢がスマホを机の上に置く。

「昨日の連中、ただの通り魔じゃない。動きが妙だった」

神崎が腕を組む。

「誰かの指示で動いていた可能性が高いですね」

白石は眉をひそめた。

「問題は、その誰かだろ」

桐生は短く言う。

「紗月さんを見てた。総長を揺さぶるため」

自分の名前が出るたびに、紗月の胸は少しだけ冷たくなる。
でも、逸らしたくなかった。

机の上の地図を見つめていると、ふと気づく。

「……これ」

小さく声を出すと、みんなの視線が紗月に集まった。

「何か気づいたか」

蓮の声は低いけれど、紗月に向ける目はやさしい。

紗月は少し緊張しながらも、地図の一角を指さした。

「昨日追いかけられた道と、さっきの場所、ちょっと似てる」

「似てる?」

相沢が身を乗り出す。

「細い道が多くて、逃げにくい場所を選んでる気がするの。偶然じゃなくて、わざと追い込みやすいところに誘導してるみたい」

部屋が静かになる。

神崎がすっと目を細めた。

「……なるほど」

白石も地図をのぞきこむ。

「ほんとだ。どっちも袋小路に近い」

相沢が感心したように笑う。

「すご。紗月ちゃん、勘いいね」

桐生は紗月を見て、静かに言った。

「見えてる」

短い言葉なのに、ちゃんと認められた気がして胸が熱くなる。

蓮は何も言わなかった。
けれど、その目が少しだけやわらいでいるのが分かった。
< 22 / 30 >

この作品をシェア

pagetop