総長の、夜よりもあぶない溺愛。
静寂を破ったのは、相沢のくすっとした笑いだった。

「まずいね、総長。囲ってるつもりが、身内まで落ちてる」

「笑い事じゃねぇ」

蓮は不機嫌そうに言い捨てる。

けれど紗月の手を握る力は、さっきより少しだけ強かった。
その変化に気づいて、紗月はそっと蓮を見る。

「蓮くん……?」

呼ぶと、蓮はすぐに目を向ける。
その視線のまっすぐさに、胸がぎゅっとなる。

「おまえは気にしなくていい」

「でも……」

「でもじゃねぇ」

そう言いながら、蓮は紗月の椅子ごと自分のほうへ少し引き寄せた。

「近っ!」

白石が吹き出す。

「分かりやすいなあ」

相沢も笑いをこらえている。

神崎はため息をつきながらも、どこか楽しそうだった。 「独占欲が限界ですね」

桐生だけが静かに言う。

「取られたくない顔してる」

蓮は舌打ちした。

「当たり前だろ」

その即答に、今度は紗月のほうが固まる。

蓮はそんな紗月の肩を抱き寄せると、低い声で言った。

「おまえに惚れるやつが増えても関係ねぇ」

「……え」

「おまえは俺の隣にいろ」

心臓が一気に跳ね上がる。

みんなの前なのに。
こんなまっすぐ言われたら、もう顔なんて上げられない。

すると相沢が笑いながら手を上げた。

「はいはい、総長の本命宣言いただきました」

白石も肩を震わせる。

「これは勝てねぇわ」

神崎はやれやれと首を振る。

「黒瀬さん、愛されてますね」

桐生はぼそっと言った。

「羨ましい」

紗月は真っ赤なまま、ぎゅっと制服の裾を握る。
でもその胸の奥には、恥ずかしさだけじゃないあたたかさが広がっていた。

守られるだけじゃない。
ちゃんと見て、考えて、認められて。
その上で、みんなに惹かれていく。

そして誰よりも強く、蓮が自分を離したがらない。

危険な町の中で始まった恋は、ますます甘く、ますます複雑になっていくのだった。
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