総長の、夜よりもあぶない溺愛。
蓮は地図を指さしながら、紗月の横に立った。

「たとえば、ここ」

そう言って身をかがめる。
距離が近い。近すぎる。
肩が触れそうなくらいで、紗月は一瞬思考が飛びそうになる。

「れ、蓮くん……」

「何だ」

「近い、です……」

そう言うと、まわりの幹部たちが一斉に反応した。

「あーあ」

相沢が楽しそうに笑う。

「特訓になってねぇだろ」

白石も吹き出す。

神崎は額に手を当てる。

「総長、自覚を持ってください」

桐生はぼそっと言った。

「無理」

蓮だけが不機嫌そうに眉を寄せる。

「教えるのに必要だろ」

「いや必要以上に近いです」

神崎が即答する。

紗月はもう真っ赤だ。
でも蓮は気にせず、むしろさらに紗月の視線を地図に戻すように顎へ軽く触れた。

「ほら、ちゃんと見ろ」

「っ……!」

そんな触れ方されたら、地図どころじゃない。
心臓がうるさすぎて、逃げ道も何も頭に入らなくなりそうだ。

相沢がにやにやしながら言う。

「紗月ちゃん、今いちばんの危険は総長かもね」

「相沢」 蓮の声が低くなる。

白石が笑いながら腕を組んだ。

「でもまあ、慣れたほうがいいぞ。総長これたぶん無意識でやってる」

「たち悪っ」

相沢が肩を震わせる。

紗月は恥ずかしさでいっぱいなのに、蓮の横顔は真剣で。
本気で教えようとしてくれているのが分かるから、文句も言えない。

「……ちゃんと、覚える」

小さくそう言うと、蓮が少しだけ目を細めた。

「偉い」

ぽん、と頭に手が乗る。

また一気に顔が熱くなる。
でももう、幹部たちは止めなかった。むしろ当然みたいな顔をしている。
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