総長の、夜よりもあぶない溺愛。
窓の下に止まったままの車は、やはり不自然だった。

昼間の町は人通りもある。
それなのに、その車だけが妙に空気から浮いて見える。

紗月はじっと窓の外を見ながら、小さく息をのんだ。

「……ひとりじゃない」

その声に、蓮がすぐ反応する。

「何が見えた」

「後ろ」

紗月は窓枠にそっと手を置いた。

「ミラーに、別の影が映った。車の後ろに誰かいる」

桐生が一瞬で目を細める。

「本当だ」

神崎も確認して、静かにうなずく。

「二人以上ですね」

相沢は楽しそうに笑った。

「すごいなあ。もう完全に戦力じゃん」

白石も口角を上げる。  

「しかも度胸あるし」

一気に注目されて、紗月は少しだけ胸が熱くなる。
でも浮かれている場合じゃなかった。

車のドアはまだ開かない。
でも、待っている。何かの合図を。

「蓮くん」

紗月はすぐに蓮を見た。

「たぶん、こっちが動くの待ってる」

蓮の瞳がすっと細くなる。

「……理由は」

「昨日みたいに追い込むため」

紗月は自分の考えを整理するように続けた。

「外に出たところを囲みたいんじゃないかな」

数秒の静寂。
そのあと、神崎がゆっくり息を吐いた。

「筋が通っています」

相沢も笑みを消してうなずく。

「たしかに。それなら今すぐ来ないのも納得」

白石が低く舌打ちする。

「待ち伏せかよ。だる」

桐生は短く言った。

「なら、先に動く」

その言葉に、蓮の口元がわずかにゆるむ。
紗月を見下ろす目には、はっきりとした誇らしさがあった。

「よく見たな」

たったそれだけなのに、紗月の胸がぎゅっとなる。
褒められるのがうれしい。役に立てたことがもっと嬉しい。
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