総長の、夜よりもあぶない溺愛。
蓮はすぐに空気を切り替えた。

「神崎、裏のルート確認」

「了解です」

「桐生、上から見張れ」

「分かった」

「白石、相沢、正面の気を引け」

「任せろ」

「はいはい」

次々と指示が飛ぶ。
その迷いのなさに、やっぱり蓮は総長なんだと思う。

そして最後に、蓮は紗月のほうを見る。

「紗月は――」

言いかけて、一瞬だけ止まる。
きっと安全な場所にいろと言いたいのだろう。
でも紗月は先に口を開いた。

「私も行く」

白石が目をぱちっとさせる。

「即答かよ」

神崎は少しだけ困ったように笑う。

「言うと思いました」

相沢は面白そうに肩をすくめた。

「ほんと好きだね、その強気」

桐生はただ静かに紗月を見る。

蓮だけが、まっすぐ紗月を見つめたまま黙っていた。

紗月はどきどきする胸を押さえながら、それでも目を逸らさない。

「邪魔しない」

「……」

「ちゃんと見る。言われたこと守る。だから、一緒にいたい」

その言葉に、蓮の眉がわずかに動く。

「危ねぇぞ」

「分かってる」

「昨日より近い場所で動くかもしれねぇ」

「それでも」

紗月はきっぱり言った。

「今度は、後ろにいるだけじゃなくて、一緒に立ちたい」

静かな部屋に、その声がしっかり残る。

相沢が小さく笑った。

「総長、もう降参したら?」

白石もにやっとする。

「ここまで言われたら、隣に置くしかねぇだろ」

神崎はやさしくうなずいた。

「黒瀬さんは覚悟を決めています」

桐生は短く言った。

「使える」

「桐生くん、それ言い方」

相沢が笑う。

蓮は深く息をついて、それから紗月の前に立つ。

「条件がある」

「うん」

「俺のそばから離れない」

「うん」

「ひとりで判断して飛び出すな」

「うん」

「何か気づいたら、すぐ俺に言え」

「分かった」

答えるたびに、蓮の目が少しずつやわらぐ。

最後に、蓮は紗月の頭へ手を置いた。

「……ちゃんとできたら褒めてやる」

「えっ」

「だから無茶すんな」

その言葉がうれしくて、紗月は思わず笑ってしまう。

「うん」

すると白石が吹き出した。

「褒めてやるって何だよ」

「餌付けみたい」

相沢もくすくす笑う。

神崎はため息まじりに言う。

「総長なりの激甘ですね」

桐生はぼそっと言った。

「もう手遅れ」
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