極甘クールな芸能人幼なじみの意地悪な溺愛~デート編・那月視点~
でも彼女が落ち着きなく触ってるスマホカバーには、俺の写真が入ってた。
ステッカー仕様になってるから、たぶんこの子が作ったファンアートってやつだと思う。
ファンの肩を借りて堂々と寝るって……今かなりピンチかも。
とにかくもう何もしゃべらず大人しくしておこう。でも彼女は一瞬口ごもってから、いちばん聞きたくなかった言葉を口にした。
「あの、青山一佳君に似てるって言われませんか?」
スマホを両手で包んで、カバーを隠したのを俺は見逃さなかった。
「あー、彼女に言われたことあります。ちょっと似てるから付き合ってもいいってOKしてくれたけど服とか髪型を寄せてくれって言い出して。そんなの絶対嫌ですけどね」
ちょっとしゃべり方もダルい感じにしたけどごまかせた自信はない。
でもそう言ったら彼女は軽く笑ってくれた。
「彼女さんの気持ち、ちょっとわかるかも」
「そうなんですか? 俺は全然わかんないっす」
早く次の駅に着いてくれ。
もうこれ以上の会話は危険。
しばらくして車内アナウンスが流れたら軽く会釈して彼女は席を立った。
ドア付近からまだこっちをチェックしてる視線を感じて、ヘッドフォンを装着。
スマホでゲームを始めた。
青山一佳はこんなところにいないし、他人の肩を借りて寝るなんて、そんな無防備なことはしないってお姉さんがいちばんよく知ってるはず。
でもなんかそれじゃ負けた気がして、電車がホームについて彼女が降りるとき、そっちを見た。
「肩貸してくれてありがとう」
帽子とヘッドフォン。
一瞬だけ取っていつもの俺のしゃべり方と声で挨拶した。
お姉さんはきょとんとしたのと驚いたのとが混ざったような顔をして、後ろの人に押し出される感じで電車を降りた。