君のとなり〜拓実と〜
第21章 青空の下で
よく晴れた、青空の日。
春の風がグラウンドを吹き抜けていた。
体育の授業は、久しぶりの走り高跳びだった。
瑠夏は少しだけ緊張しながら、助走の位置につく。
深く息を吸う。
そして――走り出した。
一定のリズムで助走をつける。
踏み切って――
身体を反らせる。
背面跳び。
視界の端を、バーが流れていく。
そして――
ふわり。
瑠夏の身体がマットへ落ちた。
「すごーい!」
「なんでそんなに跳べるの?」
クラスメイトから歓声が上がる。
瑠夏は少し照れながら、マットから身体を起こした。
「中学生の頃にね、少しやってたの。でも、久しぶりだし、スパイクじゃないし……やっぱり感覚が違うね」
そう言いながらも、胸の奥は少しだけ弾んでいた。
――跳ぶって、こんなに気持ちよかったんだ。
身体が覚えている。
助走のリズム。
踏み切る瞬間。
身体を空へ預ける感覚。
瑠夏はもう一度、バーを見る。
不思議だった。
久しぶりなのに、身体はちゃんと覚えていた。
もう一度、跳びたい。
そんな気持ちが、自然と湧いてきた。
***
校舎三階。
数学の授業中。
窓際の席に座っていた翔は、黒板に書かれた数式を眺めていた。
先生の声を聞きながら、ノートに数字を書き込む。
そのとき、ふとグラウンドに目を向けた。
そして――
息を止めた。
瑠夏だった。
背面跳び。
あのフォーム。
中学生の頃と変わらない。
いや。
あの頃より、ずっと綺麗になっている。
助走から踏み切るタイミング。
空中で身体を反らせる瞬間。
バーを越えていく姿。
眩しいくらい、綺麗だった。
翔の視線は、瑠夏から離れなかった。
久しぶりに見る。
瑠夏が跳ぶ姿。
胸の奥が、懐かしさで締めつけられる。
中学のグラウンド。
一緒に高跳びをしていた頃。
あの頃は、こんなふうになるなんて思ってもいなかった。
ただ、瑠夏と一緒に跳ぶことが楽しかった。
それだけだった。
けれど今は――。
翔は、そっと目を伏せた。
そして、ほんの少しだけ思う。
――やっぱり、俺は。
そこから先は、考えない。
考えてしまったら、また苦しくなるから。
翔は視線を黒板へ戻した。
けれど。
しばらくすると、またグラウンドを見てしまう。
そのたびに、瑠夏の姿を追ってしまう自分に気づいていた。
そして。
瑠夏が跳ぶ姿を見ているうちに、翔の中に眠っていた気持ちが、少しずつ大きくなっていった。
――俺も、もう一度跳びたい。
もう一度、高跳びに戻りたい。
瑠夏があんなふうに、楽しそうに跳んでいる。
それを見ているうちに、自分もまたあの場所に戻りたくなった。
怪我をする前の自分に戻りたいんじゃない。
もう一度、自分の足で助走をして、踏み切って、空へ跳びたい。
翔は、そう強く思った。
***
校舎五階。
英語の授業中。
拓実もまた、窓際の席にいた。
何気なくグラウンドへ目を向ける。
そして――
「……瑠夏?」
思わず、目を見開いた。
軽やかに助走して。
高く跳ぶ。
身体を反らせて、バーを越える。
そして、マットにふわりと着地する。
その姿を見ながら、拓実は微笑んだ。
「……え」
思わず、声が漏れた。
瑠夏って――こんなに跳べるのか。
想像していたより、ずっと高い。
文化祭で出会ってから知った瑠夏とは、また違う。
こんな顔をするんだ。
こんなふうに、嬉しそうに跳ぶんだ。
知らなかった。
瑠夏に、こんな一面があったなんて。
もっと知りたい。
もっと、瑠夏のことを知りたい。
そう思った瞬間、拓実の胸に、あの日から変わらない感情が蘇る。
――好きだ。
やっぱり、この子が好きだ。
拓実は、もう一度グラウンドを見る。
青空の下で笑っている瑠夏を見つめながら、自然と口元が緩んだ。
春の風がグラウンドを吹き抜けていた。
体育の授業は、久しぶりの走り高跳びだった。
瑠夏は少しだけ緊張しながら、助走の位置につく。
深く息を吸う。
そして――走り出した。
一定のリズムで助走をつける。
踏み切って――
身体を反らせる。
背面跳び。
視界の端を、バーが流れていく。
そして――
ふわり。
瑠夏の身体がマットへ落ちた。
「すごーい!」
「なんでそんなに跳べるの?」
クラスメイトから歓声が上がる。
瑠夏は少し照れながら、マットから身体を起こした。
「中学生の頃にね、少しやってたの。でも、久しぶりだし、スパイクじゃないし……やっぱり感覚が違うね」
そう言いながらも、胸の奥は少しだけ弾んでいた。
――跳ぶって、こんなに気持ちよかったんだ。
身体が覚えている。
助走のリズム。
踏み切る瞬間。
身体を空へ預ける感覚。
瑠夏はもう一度、バーを見る。
不思議だった。
久しぶりなのに、身体はちゃんと覚えていた。
もう一度、跳びたい。
そんな気持ちが、自然と湧いてきた。
***
校舎三階。
数学の授業中。
窓際の席に座っていた翔は、黒板に書かれた数式を眺めていた。
先生の声を聞きながら、ノートに数字を書き込む。
そのとき、ふとグラウンドに目を向けた。
そして――
息を止めた。
瑠夏だった。
背面跳び。
あのフォーム。
中学生の頃と変わらない。
いや。
あの頃より、ずっと綺麗になっている。
助走から踏み切るタイミング。
空中で身体を反らせる瞬間。
バーを越えていく姿。
眩しいくらい、綺麗だった。
翔の視線は、瑠夏から離れなかった。
久しぶりに見る。
瑠夏が跳ぶ姿。
胸の奥が、懐かしさで締めつけられる。
中学のグラウンド。
一緒に高跳びをしていた頃。
あの頃は、こんなふうになるなんて思ってもいなかった。
ただ、瑠夏と一緒に跳ぶことが楽しかった。
それだけだった。
けれど今は――。
翔は、そっと目を伏せた。
そして、ほんの少しだけ思う。
――やっぱり、俺は。
そこから先は、考えない。
考えてしまったら、また苦しくなるから。
翔は視線を黒板へ戻した。
けれど。
しばらくすると、またグラウンドを見てしまう。
そのたびに、瑠夏の姿を追ってしまう自分に気づいていた。
そして。
瑠夏が跳ぶ姿を見ているうちに、翔の中に眠っていた気持ちが、少しずつ大きくなっていった。
――俺も、もう一度跳びたい。
もう一度、高跳びに戻りたい。
瑠夏があんなふうに、楽しそうに跳んでいる。
それを見ているうちに、自分もまたあの場所に戻りたくなった。
怪我をする前の自分に戻りたいんじゃない。
もう一度、自分の足で助走をして、踏み切って、空へ跳びたい。
翔は、そう強く思った。
***
校舎五階。
英語の授業中。
拓実もまた、窓際の席にいた。
何気なくグラウンドへ目を向ける。
そして――
「……瑠夏?」
思わず、目を見開いた。
軽やかに助走して。
高く跳ぶ。
身体を反らせて、バーを越える。
そして、マットにふわりと着地する。
その姿を見ながら、拓実は微笑んだ。
「……え」
思わず、声が漏れた。
瑠夏って――こんなに跳べるのか。
想像していたより、ずっと高い。
文化祭で出会ってから知った瑠夏とは、また違う。
こんな顔をするんだ。
こんなふうに、嬉しそうに跳ぶんだ。
知らなかった。
瑠夏に、こんな一面があったなんて。
もっと知りたい。
もっと、瑠夏のことを知りたい。
そう思った瞬間、拓実の胸に、あの日から変わらない感情が蘇る。
――好きだ。
やっぱり、この子が好きだ。
拓実は、もう一度グラウンドを見る。
青空の下で笑っている瑠夏を見つめながら、自然と口元が緩んだ。