君のとなり〜拓実と〜
第22章 君を守りたい
朝から、瑠夏は少しだけ体調が悪かった。
けれど、休むほどではないと思っていた。
少し身体が重い気がする。
それでも、午前中の授業はなんとかやり過ごした。
昼休みには友達と話しているうちに、いつの間にか気分も落ち着いていた。
だから、大丈夫だと思っていた。
午後。
全校生徒で校庭の掃除をすることになった。
瑠夏はほうきを手に、グラウンドの端を掃いていた。
春の風に、細かな砂埃が舞う。
そのときだった。
ふっと、視界が揺れた。
「……あれ?」
足元が、急に遠くなる。
身体に力が入らない。
「瑠夏、大丈夫?」
誰かの声が聞こえた。
でも、返事をすることができなかった。
次の瞬間――
瑠夏の身体が、地面へ崩れ落ちた。
「瑠夏!」
周囲が一気に騒がしくなる。
その声に、翔が振り向いた。
人の間から見えたのは、地面に倒れている瑠夏の姿だった。
「……瑠夏!」
反射的に駆け出す。
けれど――。
翔よりも早く、瑠夏のもとへ駆けつけた人がいた。
「瑠夏!」
拓実だった。
拓実は倒れている瑠夏のそばに膝をつく。
「瑠夏、聞こえる?」
瑠夏は薄く目を開けた。
「……拓実……」
その声を聞いた瞬間、拓実の表情が変わった。
「保健室、行こう」
そう言うと、拓実は瑠夏をそっと抱き上げた。
「えっ……」
周囲から驚きの声が上がる。
そして次の瞬間――
「キャー!」
女子たちから黄色い声が上がった。
お姫様抱っこ。
長身の拓実に抱き上げられた瑠夏。
その光景は、まるで映画のワンシーンのようだった。
「めっちゃ絵になる……」
「美男美女すぎる……」
そんな声が聞こえてくる。
けれど、拓実は周囲の声など気にしていなかった。
腕の中の瑠夏だけを見ていた。
翔は、その場に立ち尽くしていた。
自分も、助けたかった。
瑠夏のところへ行きたかった。
なのに――。
自分より先に拓実が駆けつけて、瑠夏を抱き上げている。
その現実が、胸の奥を締めつけた。
***
保健室。
ベッドに横になった瑠夏のそばで、拓実は椅子に座っていた。
「ごめんね、心配かけて」
「謝らなくていいよ」
拓実はそう言って、瑠夏の手を握った。
「大丈夫だから」
「……うん」
養護の先生が様子を確認する。
しばらくして、瑠夏に告げた。
「軽い貧血みたいね。少し休めば大丈夫よ」
「よかった……」
拓実の口から、安堵の息が漏れた。
握っていた瑠夏の手に、ほんの少し力が入る。
「本当に、心配した」
「……ごめん」
「だから、謝らなくていいって」
拓実は優しく笑った。
その姿を、少し離れた場所から翔は見ていた。
ただの貧血。
大きなことではない。
それが分かっただけで、翔もようやく息を吐いた。
よかった。
本当に、よかった。
でも――。
胸の奥に残る苦しさは、消えなかった。
瑠夏が倒れた瞬間、真っ先に駆け出したのは自分だった。
それなのに、瑠夏のそばにいるのは拓実だ。
手を握っているのも。
心配して、安心しているのも。
瑠夏を守る立場にいるのも。
全部、拓実だった。
翔は、握った手をゆっくりと開いた。
そして、思った。
――俺も、瑠夏が好きなんだ。
もう、認めないわけにはいかなかった。
けれど、休むほどではないと思っていた。
少し身体が重い気がする。
それでも、午前中の授業はなんとかやり過ごした。
昼休みには友達と話しているうちに、いつの間にか気分も落ち着いていた。
だから、大丈夫だと思っていた。
午後。
全校生徒で校庭の掃除をすることになった。
瑠夏はほうきを手に、グラウンドの端を掃いていた。
春の風に、細かな砂埃が舞う。
そのときだった。
ふっと、視界が揺れた。
「……あれ?」
足元が、急に遠くなる。
身体に力が入らない。
「瑠夏、大丈夫?」
誰かの声が聞こえた。
でも、返事をすることができなかった。
次の瞬間――
瑠夏の身体が、地面へ崩れ落ちた。
「瑠夏!」
周囲が一気に騒がしくなる。
その声に、翔が振り向いた。
人の間から見えたのは、地面に倒れている瑠夏の姿だった。
「……瑠夏!」
反射的に駆け出す。
けれど――。
翔よりも早く、瑠夏のもとへ駆けつけた人がいた。
「瑠夏!」
拓実だった。
拓実は倒れている瑠夏のそばに膝をつく。
「瑠夏、聞こえる?」
瑠夏は薄く目を開けた。
「……拓実……」
その声を聞いた瞬間、拓実の表情が変わった。
「保健室、行こう」
そう言うと、拓実は瑠夏をそっと抱き上げた。
「えっ……」
周囲から驚きの声が上がる。
そして次の瞬間――
「キャー!」
女子たちから黄色い声が上がった。
お姫様抱っこ。
長身の拓実に抱き上げられた瑠夏。
その光景は、まるで映画のワンシーンのようだった。
「めっちゃ絵になる……」
「美男美女すぎる……」
そんな声が聞こえてくる。
けれど、拓実は周囲の声など気にしていなかった。
腕の中の瑠夏だけを見ていた。
翔は、その場に立ち尽くしていた。
自分も、助けたかった。
瑠夏のところへ行きたかった。
なのに――。
自分より先に拓実が駆けつけて、瑠夏を抱き上げている。
その現実が、胸の奥を締めつけた。
***
保健室。
ベッドに横になった瑠夏のそばで、拓実は椅子に座っていた。
「ごめんね、心配かけて」
「謝らなくていいよ」
拓実はそう言って、瑠夏の手を握った。
「大丈夫だから」
「……うん」
養護の先生が様子を確認する。
しばらくして、瑠夏に告げた。
「軽い貧血みたいね。少し休めば大丈夫よ」
「よかった……」
拓実の口から、安堵の息が漏れた。
握っていた瑠夏の手に、ほんの少し力が入る。
「本当に、心配した」
「……ごめん」
「だから、謝らなくていいって」
拓実は優しく笑った。
その姿を、少し離れた場所から翔は見ていた。
ただの貧血。
大きなことではない。
それが分かっただけで、翔もようやく息を吐いた。
よかった。
本当に、よかった。
でも――。
胸の奥に残る苦しさは、消えなかった。
瑠夏が倒れた瞬間、真っ先に駆け出したのは自分だった。
それなのに、瑠夏のそばにいるのは拓実だ。
手を握っているのも。
心配して、安心しているのも。
瑠夏を守る立場にいるのも。
全部、拓実だった。
翔は、握った手をゆっくりと開いた。
そして、思った。
――俺も、瑠夏が好きなんだ。
もう、認めないわけにはいかなかった。