君のとなり〜拓実と〜
第35章 結ばれたリボン
文化祭も終わり、後夜祭が始まっていた。
校庭から聞こえてくる歓声を背に、拓実と私は屋上へ向かった。
階段を上りきると、夜の風がふわっと頬を撫でる。
「気持ちいいね」
「うん」
フェンスの向こうには、後夜祭で賑わう校庭が見える。
以前、二人でお弁当を食べた場所。
今では、私にとっても拓実にとっても、大切な場所になっていた。
私はポケットの中の小さな箱を、そっと握りしめた。
「拓実」
「ん?」
「これ……」
「これ」
「……?」
「一年記念」
「え……」
拓実が驚いた顔をする。
「開けていい?」
「うん」
箱を開けた拓実が、少し驚いた顔をする。
「……ありがとう」
「気に入った?」
「もちろん」
拓実が嬉しそうに笑う。
その笑顔を見て、私も笑った。
「大事に使う」
「うん」
拓実が手の中のプレゼントを眺める。
私が選んだのは、少し上質なボールペン。
一年分のありがとうを、形にしたかった。
「じゃあ、今度は俺の番」
「え?」
拓実がポケットから、小さな箱を取り出した。
「一年記念」
「……私にも?」
「うん」
受け取った箱を開ける。
中には、細いブレスレット。
小さなリボンのモチーフがついていた。
「可愛い……」
「気に入った?」
「うん。すごく」
嬉しくて、何度も眺める。
拓実が、私の手首に視線を落とした。
「そのリボン、体育祭のときのことを思い出して選んだんだ」
「体育祭……?」
「うん。あのとき、俺のハチマキを瑠夏の頭に結んで、瑠夏のハチマキを俺の手首に結んだだろ」
「……うん」
あの日の光景が蘇る。
みんなの前で、私が拓実の手首にハチマキをリボン結びした。
拓実が優しく笑う。
「あのときみたいに、これからもずっと繋がっていられたらいいなって思って」
胸の奥が、じんと熱くなる。
「だから、リボンにした」
「……拓実」
「気に入ってくれた?」
「うん。すごく」
拓実はブレスレットを私の手首に持っていく。
「手、出して」
「うん」
拓実の指が、私の手首に触れる。
ゆっくりとブレスレットを留めてくれた。
小さなリボンが、手首で揺れる。
「……どう?」
「可愛い」
「よかった」
私は嬉しくなって、拓実を見る。
「ありがとう」
「うん」
そのとき。
校庭から歓声が上がった。
パンッ。
夜空に花火が上がる。
「わぁ……!」
思わず空を見上げる。
後夜祭の音楽が、屋上までかすかに届いてくる。
Mrs. Pineappleの『点々の唄』。
優しいメロディーと花火の音が重なっていく。
「綺麗……」
「うん」
花火に夢中になっていた、そのとき。
ふわっと、背中から温かいものに包まれた。
「……拓実?」
拓実の腕が、私のお腹の前で重なる。
背中に伝わる体温。
「ん?」
「びっくりした」
「驚かせた?」
「……ううん」
私は拓実の腕に、そっと手を重ねた。
「このまま見よう」
「うん」
二人で花火を見つめる。
拓実の胸に背中を預けると、なんだか安心する。
しばらく、何も言わなかった。
ただ花火を見ていた。
「……瑠夏」
「ん?」
「振り向いて」
「どうしたの?」
私は身体を反転させる。
拓実と目が合った。
いつもより近い距離。
拓実が少しだけ照れたように笑う。
「……キスしたい」
「……っ」
胸が大きく跳ねた。
「……うん」
小さく頷く。
拓実の手が、そっと私の頬に触れる。
そして――
唇が重なった。
優しく。
ゆっくり。
一年分の幸せを確かめるようなキス。
離れたあとも、拓実はすぐには離れなかった。
額をそっと寄せる。
「……好きだよ、瑠夏」
「私も……」
また花火が夜空に咲く。
その光の中で、二人は笑った。
手首には、小さなリボン。
体育祭の日に結んだハチマキから繋がった、二人だけの記念。
今年の文化祭は――
恋人として迎えた、特別な一日になった。
校庭から聞こえてくる歓声を背に、拓実と私は屋上へ向かった。
階段を上りきると、夜の風がふわっと頬を撫でる。
「気持ちいいね」
「うん」
フェンスの向こうには、後夜祭で賑わう校庭が見える。
以前、二人でお弁当を食べた場所。
今では、私にとっても拓実にとっても、大切な場所になっていた。
私はポケットの中の小さな箱を、そっと握りしめた。
「拓実」
「ん?」
「これ……」
「これ」
「……?」
「一年記念」
「え……」
拓実が驚いた顔をする。
「開けていい?」
「うん」
箱を開けた拓実が、少し驚いた顔をする。
「……ありがとう」
「気に入った?」
「もちろん」
拓実が嬉しそうに笑う。
その笑顔を見て、私も笑った。
「大事に使う」
「うん」
拓実が手の中のプレゼントを眺める。
私が選んだのは、少し上質なボールペン。
一年分のありがとうを、形にしたかった。
「じゃあ、今度は俺の番」
「え?」
拓実がポケットから、小さな箱を取り出した。
「一年記念」
「……私にも?」
「うん」
受け取った箱を開ける。
中には、細いブレスレット。
小さなリボンのモチーフがついていた。
「可愛い……」
「気に入った?」
「うん。すごく」
嬉しくて、何度も眺める。
拓実が、私の手首に視線を落とした。
「そのリボン、体育祭のときのことを思い出して選んだんだ」
「体育祭……?」
「うん。あのとき、俺のハチマキを瑠夏の頭に結んで、瑠夏のハチマキを俺の手首に結んだだろ」
「……うん」
あの日の光景が蘇る。
みんなの前で、私が拓実の手首にハチマキをリボン結びした。
拓実が優しく笑う。
「あのときみたいに、これからもずっと繋がっていられたらいいなって思って」
胸の奥が、じんと熱くなる。
「だから、リボンにした」
「……拓実」
「気に入ってくれた?」
「うん。すごく」
拓実はブレスレットを私の手首に持っていく。
「手、出して」
「うん」
拓実の指が、私の手首に触れる。
ゆっくりとブレスレットを留めてくれた。
小さなリボンが、手首で揺れる。
「……どう?」
「可愛い」
「よかった」
私は嬉しくなって、拓実を見る。
「ありがとう」
「うん」
そのとき。
校庭から歓声が上がった。
パンッ。
夜空に花火が上がる。
「わぁ……!」
思わず空を見上げる。
後夜祭の音楽が、屋上までかすかに届いてくる。
Mrs. Pineappleの『点々の唄』。
優しいメロディーと花火の音が重なっていく。
「綺麗……」
「うん」
花火に夢中になっていた、そのとき。
ふわっと、背中から温かいものに包まれた。
「……拓実?」
拓実の腕が、私のお腹の前で重なる。
背中に伝わる体温。
「ん?」
「びっくりした」
「驚かせた?」
「……ううん」
私は拓実の腕に、そっと手を重ねた。
「このまま見よう」
「うん」
二人で花火を見つめる。
拓実の胸に背中を預けると、なんだか安心する。
しばらく、何も言わなかった。
ただ花火を見ていた。
「……瑠夏」
「ん?」
「振り向いて」
「どうしたの?」
私は身体を反転させる。
拓実と目が合った。
いつもより近い距離。
拓実が少しだけ照れたように笑う。
「……キスしたい」
「……っ」
胸が大きく跳ねた。
「……うん」
小さく頷く。
拓実の手が、そっと私の頬に触れる。
そして――
唇が重なった。
優しく。
ゆっくり。
一年分の幸せを確かめるようなキス。
離れたあとも、拓実はすぐには離れなかった。
額をそっと寄せる。
「……好きだよ、瑠夏」
「私も……」
また花火が夜空に咲く。
その光の中で、二人は笑った。
手首には、小さなリボン。
体育祭の日に結んだハチマキから繋がった、二人だけの記念。
今年の文化祭は――
恋人として迎えた、特別な一日になった。