君のとなり〜拓実と〜
第40章 バレンタイン
バレンタインデー。
今日は、拓実が明日の試験のために、関東へ向かう日。
私は、拓実を見送るために新幹線の駅まで来ていた。
「寒いね」
「うん」
吐く息が白くなる。
拓実はいつもと変わらないように見えるけれど、明日が試験だと思うと、私まで少し緊張する。
「ちゃんと寝た?」
「寝たよ」
「勉強しすぎてない?」
「大丈夫」
「そっか」
そんな何気ない会話をしながら、二人でホームを歩く。
もうすぐ、拓実の乗る新幹線が来る。
私は、自分の首元に巻いていたマフラーに触れた。
「拓実」
「ん?」
「これ……使って」
マフラーを外して、拓実の首に巻く。
「え?」
「明日、寒いかもしれないから」
拓実が、自分の首元に巻かれたマフラーを見る。
「これ、瑠夏のだろ?」
「うん」
「いいの?」
「試験が終わるまで貸してあげる」
拓実が少し笑った。
「ありがとう」
その声が優しい。
私はマフラーの端を整える。
「これで大丈夫」
「瑠夏が巻いてくれたから、これで絶対大丈夫だな」
「……ふふ」
思わず笑ってしまう。
すると、拓実が私の顔を見つめた。
「何?」
「いや……今日も可愛いなって思って」
「……急に言わないでよ」
「本当のことだから」
また頬が熱くなる。
私は照れ隠しに、鞄の中へ手を入れた。
「あ、これも」
小さな袋を取り出す。
「はい」
「?」
「バレンタイン」
拓実が目を丸くする。
「チョコ?」
「うん」
「ありがとう」
受け取った拓実が、嬉しそうに笑う。
「嬉しい」
「試験前だから、食べすぎないでね」
「分かってる」
「ちゃんと少しずつ食べて」
「はい」
「……ふふ」
いつもの拓実とのやり取り。
それだけで、胸が温かくなる。
そのとき、新幹線がホームへ入ってきた。
「来た」
「うん」
拓実が荷物を持ち直す。
いよいよだ。
「瑠夏」
「ん?」
「明日、頑張ってくる」
「うん」
「応援してて」
「もちろん」
私は笑って頷いた。
「拓実なら大丈夫」
「そう言ってもらえると、頑張れる」
拓実が、そっと私の手を握る。
「終わったら、連絡する」
「うん。待ってる」
指が離れる。
拓実が新幹線へ向かう。
乗り込む直前、拓実が振り返った。
「瑠夏」
「うん?」
「マフラー、ちゃんと返すから」
「……うん」
「それまで、俺が預かってる」
拓実が笑う。
「大切にする」
その言葉に、胸がきゅっとなる。
「いってらっしゃい」
「行ってきます」
ドアが閉まる。
新幹線が、ゆっくりと動き始めた。
窓越しに、拓実が手を振っている。
私も手を振り返す。
少しずつ遠ざかっていく姿。
首元には、私のマフラー。
そして鞄の中には、私が渡したチョコ。
それだけで、少しだけ安心できた。
新幹線が見えなくなるまで、私はその場に立っていた。
寂しい。
やっぱり、寂しい。
だけど――。
今は、泣かない。
拓実が頑張る日。
私も笑顔で送り出すって決めたから。
「頑張ってね、拓実」
小さく呟く。
冷たい風が吹く。
私はマフラーのなくなった首元をそっと押さえた。
そして、拓実が向かった先を見つめながら、静かに笑った。
今日は、拓実が明日の試験のために、関東へ向かう日。
私は、拓実を見送るために新幹線の駅まで来ていた。
「寒いね」
「うん」
吐く息が白くなる。
拓実はいつもと変わらないように見えるけれど、明日が試験だと思うと、私まで少し緊張する。
「ちゃんと寝た?」
「寝たよ」
「勉強しすぎてない?」
「大丈夫」
「そっか」
そんな何気ない会話をしながら、二人でホームを歩く。
もうすぐ、拓実の乗る新幹線が来る。
私は、自分の首元に巻いていたマフラーに触れた。
「拓実」
「ん?」
「これ……使って」
マフラーを外して、拓実の首に巻く。
「え?」
「明日、寒いかもしれないから」
拓実が、自分の首元に巻かれたマフラーを見る。
「これ、瑠夏のだろ?」
「うん」
「いいの?」
「試験が終わるまで貸してあげる」
拓実が少し笑った。
「ありがとう」
その声が優しい。
私はマフラーの端を整える。
「これで大丈夫」
「瑠夏が巻いてくれたから、これで絶対大丈夫だな」
「……ふふ」
思わず笑ってしまう。
すると、拓実が私の顔を見つめた。
「何?」
「いや……今日も可愛いなって思って」
「……急に言わないでよ」
「本当のことだから」
また頬が熱くなる。
私は照れ隠しに、鞄の中へ手を入れた。
「あ、これも」
小さな袋を取り出す。
「はい」
「?」
「バレンタイン」
拓実が目を丸くする。
「チョコ?」
「うん」
「ありがとう」
受け取った拓実が、嬉しそうに笑う。
「嬉しい」
「試験前だから、食べすぎないでね」
「分かってる」
「ちゃんと少しずつ食べて」
「はい」
「……ふふ」
いつもの拓実とのやり取り。
それだけで、胸が温かくなる。
そのとき、新幹線がホームへ入ってきた。
「来た」
「うん」
拓実が荷物を持ち直す。
いよいよだ。
「瑠夏」
「ん?」
「明日、頑張ってくる」
「うん」
「応援してて」
「もちろん」
私は笑って頷いた。
「拓実なら大丈夫」
「そう言ってもらえると、頑張れる」
拓実が、そっと私の手を握る。
「終わったら、連絡する」
「うん。待ってる」
指が離れる。
拓実が新幹線へ向かう。
乗り込む直前、拓実が振り返った。
「瑠夏」
「うん?」
「マフラー、ちゃんと返すから」
「……うん」
「それまで、俺が預かってる」
拓実が笑う。
「大切にする」
その言葉に、胸がきゅっとなる。
「いってらっしゃい」
「行ってきます」
ドアが閉まる。
新幹線が、ゆっくりと動き始めた。
窓越しに、拓実が手を振っている。
私も手を振り返す。
少しずつ遠ざかっていく姿。
首元には、私のマフラー。
そして鞄の中には、私が渡したチョコ。
それだけで、少しだけ安心できた。
新幹線が見えなくなるまで、私はその場に立っていた。
寂しい。
やっぱり、寂しい。
だけど――。
今は、泣かない。
拓実が頑張る日。
私も笑顔で送り出すって決めたから。
「頑張ってね、拓実」
小さく呟く。
冷たい風が吹く。
私はマフラーのなくなった首元をそっと押さえた。
そして、拓実が向かった先を見つめながら、静かに笑った。