君のとなり〜拓実と〜
第44章 会えない夜
拓実が関東へ行ってから、しばらく経った。
毎日は、思っていた以上に忙しかった。
朝、目を覚ます。
制服に着替えて、学校へ行く。
授業を受けて、放課後になれば新体操部へ向かう。
そして部活が終わったあと――私は、小学生の頃に通っていた新体操クラブへ向かった。
夏の大会までの期間限定で、指導を受けさせてもらうことになったのだ。
「久しぶりね、瑠夏ちゃん」
懐かしい先生の笑顔。
「はい。よろしくお願いします」
久しぶりに触れるクラブの床。
小学生の頃、何度も何度も練習した場所。
手具を持つ。
身体を動かす。
音楽が流れる。
投げる。
受ける。
回る。
跳ぶ。
考える暇なんてないくらい、身体を動かした。
それでいい。
今は、それでいい。
忙しくしていれば。
新体操に集中していれば。
拓実のことを考えずにいられる。
そう思っていた。
学校。
部活。
新体操クラブ。
勉強。
毎日、時間が足りないくらいだった。
それでも――夜になると、どうしても拓実を思い出してしまう。
家に帰る頃には、身体はクタクタ。
お風呂に入って、机に向かって。
気がつけば、時計の針は深夜を回っている。
「……眠い」
ベッドに倒れ込む。
これだけ疲れていれば、きっとすぐ眠れる。
そう思った。
なのに。
布団に入って、部屋の明かりを消した瞬間。
静寂が訪れる。
そこで初めて気づく。
今日、一度も拓実のことを考えないようにしていたことに。
スマホを手に取る。
画面を見る。
拓実とのメール。
最後に届いたメッセージ。
何度も読み返した言葉。
『瑠夏、笑って』
『愛してる』
胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
「……毎日、するって言ったのに」
責めたいわけじゃない。
ただ、声が聞きたかった。
「……会いたい」
ぽつりと呟いた瞬間。
目の奥が熱くなった。
涙が一粒、頬を伝う。
拭っても、また溢れてくる。
「……やだ……」
「……拓実」
小さく名前を呼ぶ。
返事はない。
当たり前なのに。
それが、たまらなく寂しい。
卒業式までは、当たり前のように会えていた。
顔を見て。
声を聞いて。
隣にいて。
手を繋いで。
それが突然、全部なくなった。
離れている。
ただ、それだけなのに。
こんなにも遠く感じる。
泣きたくない。
拓実は頑張っている。
新しい場所で、新しい生活を始めている。
私だって、頑張らなくちゃ。
そう思っているのに。
夜になると。
拓実のことを思い出してしまう。
笑った顔。
優しい声。
私の名前を呼ぶ声。
最後に見た、新幹線の窓越しの笑顔。
「……拓実……」
声が震える。
私は枕に顔を埋めた。
昼間は、どれだけ忙しくしていても平気だった。
新体操をしている間は、忘れられた。
勉強をしている間も、大丈夫だった。
でも――眠る前だけは。
どうしても無理だった。
会いたい。
声が聞きたい。
触れたい。
抱きしめてほしい。
そんな気持ちが、次から次へと溢れてくる。
涙で濡れた頬を、枕に押しつける。
「……拓実、大好き」
誰にも聞こえない部屋の中で。
私は、何度も拓実の名前を呼んだ。
そして涙を流しながら――
いつの間にか眠りについた。
毎日は、思っていた以上に忙しかった。
朝、目を覚ます。
制服に着替えて、学校へ行く。
授業を受けて、放課後になれば新体操部へ向かう。
そして部活が終わったあと――私は、小学生の頃に通っていた新体操クラブへ向かった。
夏の大会までの期間限定で、指導を受けさせてもらうことになったのだ。
「久しぶりね、瑠夏ちゃん」
懐かしい先生の笑顔。
「はい。よろしくお願いします」
久しぶりに触れるクラブの床。
小学生の頃、何度も何度も練習した場所。
手具を持つ。
身体を動かす。
音楽が流れる。
投げる。
受ける。
回る。
跳ぶ。
考える暇なんてないくらい、身体を動かした。
それでいい。
今は、それでいい。
忙しくしていれば。
新体操に集中していれば。
拓実のことを考えずにいられる。
そう思っていた。
学校。
部活。
新体操クラブ。
勉強。
毎日、時間が足りないくらいだった。
それでも――夜になると、どうしても拓実を思い出してしまう。
家に帰る頃には、身体はクタクタ。
お風呂に入って、机に向かって。
気がつけば、時計の針は深夜を回っている。
「……眠い」
ベッドに倒れ込む。
これだけ疲れていれば、きっとすぐ眠れる。
そう思った。
なのに。
布団に入って、部屋の明かりを消した瞬間。
静寂が訪れる。
そこで初めて気づく。
今日、一度も拓実のことを考えないようにしていたことに。
スマホを手に取る。
画面を見る。
拓実とのメール。
最後に届いたメッセージ。
何度も読み返した言葉。
『瑠夏、笑って』
『愛してる』
胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
「……毎日、するって言ったのに」
責めたいわけじゃない。
ただ、声が聞きたかった。
「……会いたい」
ぽつりと呟いた瞬間。
目の奥が熱くなった。
涙が一粒、頬を伝う。
拭っても、また溢れてくる。
「……やだ……」
「……拓実」
小さく名前を呼ぶ。
返事はない。
当たり前なのに。
それが、たまらなく寂しい。
卒業式までは、当たり前のように会えていた。
顔を見て。
声を聞いて。
隣にいて。
手を繋いで。
それが突然、全部なくなった。
離れている。
ただ、それだけなのに。
こんなにも遠く感じる。
泣きたくない。
拓実は頑張っている。
新しい場所で、新しい生活を始めている。
私だって、頑張らなくちゃ。
そう思っているのに。
夜になると。
拓実のことを思い出してしまう。
笑った顔。
優しい声。
私の名前を呼ぶ声。
最後に見た、新幹線の窓越しの笑顔。
「……拓実……」
声が震える。
私は枕に顔を埋めた。
昼間は、どれだけ忙しくしていても平気だった。
新体操をしている間は、忘れられた。
勉強をしている間も、大丈夫だった。
でも――眠る前だけは。
どうしても無理だった。
会いたい。
声が聞きたい。
触れたい。
抱きしめてほしい。
そんな気持ちが、次から次へと溢れてくる。
涙で濡れた頬を、枕に押しつける。
「……拓実、大好き」
誰にも聞こえない部屋の中で。
私は、何度も拓実の名前を呼んだ。
そして涙を流しながら――
いつの間にか眠りについた。