君のとなり〜拓実と〜
第45章 君に会いたい
そのメールは、突然届いた。
『瑠夏、ゴールデンウィークに帰るよ』
『本当に?』
送った直後、スマホが鳴った。
拓実からの着信。
「もしもし?」
『瑠夏?』
「拓実……」
久しぶりに聞く、拓実の声。
たった数週間なのに。
その声が、ずっと遠くにあったように感じていた。
『……声、聞きたかった』
「……私も」
声を聞いただけなのに、涙が出そうになる。
『瑠夏に会いたい』
その一言に、胸がきゅっと締めつけられた。
「……うん」
『だから、ゴールデンウィークに帰る』
「……嬉しい」
『瑠夏の予定、ちゃんと聞いておきたいんだ』
「うん」
私は拓実に、ゴールデンウィークの予定を話した。
『私、三日に青葉カップがあるの』
『わかった。それまでには帰るよ』
その言葉に、胸が高鳴った。
去年の五月。
青葉カップ。
あの日、私はボールを落とした。
結果は――二位。
悔しくて、泣いた。
でも、拓実がそばにいてくれた。
そして今年。
拓実は関東にいる。
それでも――
私のいる場所まで、会いに帰ってきてくれる。
「今年は……絶対落とさない」
そう言うと、
『うん』
『瑠夏ならできる』
胸の奥が、じんわり熱くなる。
『ねえ、拓実』
『ん?』
「帰ってきたら……ずっと一緒にいてくれる?」
少しだけ間があった。
『うん』
その返事が、優しく胸に響く。
『会えなかった分、いっぱい一緒にいたい』
「……私も」
『瑠夏の顔、近くで見たい』
「電話じゃ、だめ?」
『だめじゃない。でも……やっぱり直接見たい』
「……私も、拓実に会って、ちゃんと顔見たい」
『じゃあ、いっぱい見て』
「え?」
『俺のこと。会えなかった分』
思わず笑ってしまう。
「そんなに見たら、恥ずかしいよ」
『俺は瑠夏のこと、ずっと見てると思う』
「……もう」
電話の向こうで、拓実が笑う。
その声を聞いているだけで、胸が温かくなる。
『早く会いたいな』
「うん……早く会いたい」
『会ったら、最初に抱きしめる』
「……うん」
『思いっきり』
「私も、思いっきり抱きつく」
『約束』
「約束」
去年の悔しさを、今年は絶対に晴らしたい。
そして――
もう一度、拓実に見てほしい。
頑張っている私を。
笑っている私を。
「……待ってるからね、拓実」
スマホを胸に抱きしめる。
ゴールデンウィークが――
待ち遠しくなった。
*
そして――拓実が帰ってくる日。
私は、新幹線の駅の改札前で拓実を待っていた。
何度も時計を見る。
まだかな。
早く会いたい。
逸る気持ちを抑えながら、私は改札の向こうを見つめていた。
やがて、人の波の中に見慣れた栗色の髪が見えた。
「……拓実」
胸が、大きく跳ねる。
目が合った。
拓実が笑った。
その瞬間、もう我慢できなかった。
私は駆け寄る。
「拓実……!」
「瑠夏」
次の瞬間――
ぎゅっ、と抱きしめられた。
久しぶりの腕の中。
久しぶりの温もり。
ずっと欲しかった場所だった。
「……会いたかった」
拓実の声が、耳元で響く。
「私も……会いたかった」
それだけ言うのが精いっぱいだった。
拓実の腕に、さらに力がこもる。
私も拓実の背中に回した手に、さらに力を込めた。
しばらくして、拓実が少し身体を離した。
そして、私の顔をじっと見る。
「……瑠夏、ちょっと痩せた?」
「え?」
思わず自分の頬に触れる。
「そうかな?」
「うん。前より細くなった気がする」
「新体操、頑張りすぎたかな」
笑ってみせると、拓実は少しだけ眉を寄せた。
「……頑張りすぎないで」
「大丈夫だよ」
「本当に?」
「うん」
拓実は私の顔を見つめたまま、ふっと優しく笑った。
「ならいいけど」
そして、もう一度私を抱きしめる。
「……ずっと、瑠夏を抱きしめたかった」
その言葉に、胸がいっぱいになった。
離れていた時間が、嘘みたいに消えていく。
*
その日は、久しぶりに二人で街を歩いた。
高校生の頃は、学校と部活で毎日が終わっていた。
こうして二人で街を歩くことさえ、なんだか新鮮だった。
並んで歩いていると、拓実が私の手を取った。
「……手、繋ぐ?」
「うん」
指を絡める。
拓実の手の温かさが、じんわり伝わってくる。
それだけなのに、嬉しくて仕方なかった。
「……なんか、変な感じ」
「何が?」
「こうして拓実と歩いてるの」
「俺は、すごく嬉しいけど」
「私も……すごく嬉しい」
拓実が握った手に、少しだけ力を込める。
「離れてる間、ずっとこうしたかった」
その言葉に、胸が熱くなった。
しばらく歩いていると、私はそっと拓実の腕に手を回した。
「瑠夏?」
「……こうしてみたかったの」
拓実が少し驚いた顔をして、それから嬉しそうに笑った。
「うん。いいよ」
そのまま、二人で歩く。
拓実の腕に頬が近づく。
肩が触れるたびに、胸がくすぐったくなる。
「……瑠夏」
「ん?」
「今日、離れたくないな」
「……私も」
「じゃあ、もう少しこのままでいよう」
「うん」
高校生だった頃にはしなかったことを、今は少しずつできるようになっていた。
夕方。
帰る時間が近づく。
楽しい時間は、どうしてこんなに早いんだろう。
駅へ向かう道で、拓実がふいに足を止めた。
「瑠夏」
「ん?」
振り向く。
拓実が、優しく私を見つめていた。
「……どうしたの?」
「会えなかった分、ちゃんと顔見ておきたい」
「もう……ずっと見てるじゃん」
「足りない」
そう言って、拓実が一歩近づく。
胸が高鳴った。
拓実の手が、そっと私の頬に触れる。
「……痩せたの、やっぱり心配」
「大丈夫だよ」
「でも、会えなかった分まで、ちゃんと大事にしたい」
その言葉に、胸がいっぱいになる。
次の瞬間――
そっと、唇が重なった。
久しぶりのキス。
触れるだけの、優しいキスだった。
離れたあとも、拓実の顔がすぐ近くにある。
「……久しぶり」
「うん……」
「ずっとしたかった」
「……私も」
もう一度、今度は少し長く唇が重なる。
離れたあと、拓実が私の額に自分の額をそっと寄せた。
「帰ってきてよかった」
「私も……会えてよかった」
「瑠夏」
「ん?」
「好き」
離れていた時間が長かったからなのか、その言葉がいつもより胸の奥まで届いた。
「……私も、大好き」
拓実が嬉しそうに笑う。
「やっぱり、直接聞くと嬉しい」
「電話でも言ってたでしょ」
「うん。でも、今は目の前に瑠夏がいるから」
そう言って、また私の手を握る。
繋いだ手を、もう一度ぎゅっと握る。
「青葉カップ、頑張って」
「うん。今度は絶対、優勝する」
「俺、ちゃんと見てるから」
その言葉に、私は笑った。
今度は、嬉し涙が出そうだった。
『瑠夏、ゴールデンウィークに帰るよ』
『本当に?』
送った直後、スマホが鳴った。
拓実からの着信。
「もしもし?」
『瑠夏?』
「拓実……」
久しぶりに聞く、拓実の声。
たった数週間なのに。
その声が、ずっと遠くにあったように感じていた。
『……声、聞きたかった』
「……私も」
声を聞いただけなのに、涙が出そうになる。
『瑠夏に会いたい』
その一言に、胸がきゅっと締めつけられた。
「……うん」
『だから、ゴールデンウィークに帰る』
「……嬉しい」
『瑠夏の予定、ちゃんと聞いておきたいんだ』
「うん」
私は拓実に、ゴールデンウィークの予定を話した。
『私、三日に青葉カップがあるの』
『わかった。それまでには帰るよ』
その言葉に、胸が高鳴った。
去年の五月。
青葉カップ。
あの日、私はボールを落とした。
結果は――二位。
悔しくて、泣いた。
でも、拓実がそばにいてくれた。
そして今年。
拓実は関東にいる。
それでも――
私のいる場所まで、会いに帰ってきてくれる。
「今年は……絶対落とさない」
そう言うと、
『うん』
『瑠夏ならできる』
胸の奥が、じんわり熱くなる。
『ねえ、拓実』
『ん?』
「帰ってきたら……ずっと一緒にいてくれる?」
少しだけ間があった。
『うん』
その返事が、優しく胸に響く。
『会えなかった分、いっぱい一緒にいたい』
「……私も」
『瑠夏の顔、近くで見たい』
「電話じゃ、だめ?」
『だめじゃない。でも……やっぱり直接見たい』
「……私も、拓実に会って、ちゃんと顔見たい」
『じゃあ、いっぱい見て』
「え?」
『俺のこと。会えなかった分』
思わず笑ってしまう。
「そんなに見たら、恥ずかしいよ」
『俺は瑠夏のこと、ずっと見てると思う』
「……もう」
電話の向こうで、拓実が笑う。
その声を聞いているだけで、胸が温かくなる。
『早く会いたいな』
「うん……早く会いたい」
『会ったら、最初に抱きしめる』
「……うん」
『思いっきり』
「私も、思いっきり抱きつく」
『約束』
「約束」
去年の悔しさを、今年は絶対に晴らしたい。
そして――
もう一度、拓実に見てほしい。
頑張っている私を。
笑っている私を。
「……待ってるからね、拓実」
スマホを胸に抱きしめる。
ゴールデンウィークが――
待ち遠しくなった。
*
そして――拓実が帰ってくる日。
私は、新幹線の駅の改札前で拓実を待っていた。
何度も時計を見る。
まだかな。
早く会いたい。
逸る気持ちを抑えながら、私は改札の向こうを見つめていた。
やがて、人の波の中に見慣れた栗色の髪が見えた。
「……拓実」
胸が、大きく跳ねる。
目が合った。
拓実が笑った。
その瞬間、もう我慢できなかった。
私は駆け寄る。
「拓実……!」
「瑠夏」
次の瞬間――
ぎゅっ、と抱きしめられた。
久しぶりの腕の中。
久しぶりの温もり。
ずっと欲しかった場所だった。
「……会いたかった」
拓実の声が、耳元で響く。
「私も……会いたかった」
それだけ言うのが精いっぱいだった。
拓実の腕に、さらに力がこもる。
私も拓実の背中に回した手に、さらに力を込めた。
しばらくして、拓実が少し身体を離した。
そして、私の顔をじっと見る。
「……瑠夏、ちょっと痩せた?」
「え?」
思わず自分の頬に触れる。
「そうかな?」
「うん。前より細くなった気がする」
「新体操、頑張りすぎたかな」
笑ってみせると、拓実は少しだけ眉を寄せた。
「……頑張りすぎないで」
「大丈夫だよ」
「本当に?」
「うん」
拓実は私の顔を見つめたまま、ふっと優しく笑った。
「ならいいけど」
そして、もう一度私を抱きしめる。
「……ずっと、瑠夏を抱きしめたかった」
その言葉に、胸がいっぱいになった。
離れていた時間が、嘘みたいに消えていく。
*
その日は、久しぶりに二人で街を歩いた。
高校生の頃は、学校と部活で毎日が終わっていた。
こうして二人で街を歩くことさえ、なんだか新鮮だった。
並んで歩いていると、拓実が私の手を取った。
「……手、繋ぐ?」
「うん」
指を絡める。
拓実の手の温かさが、じんわり伝わってくる。
それだけなのに、嬉しくて仕方なかった。
「……なんか、変な感じ」
「何が?」
「こうして拓実と歩いてるの」
「俺は、すごく嬉しいけど」
「私も……すごく嬉しい」
拓実が握った手に、少しだけ力を込める。
「離れてる間、ずっとこうしたかった」
その言葉に、胸が熱くなった。
しばらく歩いていると、私はそっと拓実の腕に手を回した。
「瑠夏?」
「……こうしてみたかったの」
拓実が少し驚いた顔をして、それから嬉しそうに笑った。
「うん。いいよ」
そのまま、二人で歩く。
拓実の腕に頬が近づく。
肩が触れるたびに、胸がくすぐったくなる。
「……瑠夏」
「ん?」
「今日、離れたくないな」
「……私も」
「じゃあ、もう少しこのままでいよう」
「うん」
高校生だった頃にはしなかったことを、今は少しずつできるようになっていた。
夕方。
帰る時間が近づく。
楽しい時間は、どうしてこんなに早いんだろう。
駅へ向かう道で、拓実がふいに足を止めた。
「瑠夏」
「ん?」
振り向く。
拓実が、優しく私を見つめていた。
「……どうしたの?」
「会えなかった分、ちゃんと顔見ておきたい」
「もう……ずっと見てるじゃん」
「足りない」
そう言って、拓実が一歩近づく。
胸が高鳴った。
拓実の手が、そっと私の頬に触れる。
「……痩せたの、やっぱり心配」
「大丈夫だよ」
「でも、会えなかった分まで、ちゃんと大事にしたい」
その言葉に、胸がいっぱいになる。
次の瞬間――
そっと、唇が重なった。
久しぶりのキス。
触れるだけの、優しいキスだった。
離れたあとも、拓実の顔がすぐ近くにある。
「……久しぶり」
「うん……」
「ずっとしたかった」
「……私も」
もう一度、今度は少し長く唇が重なる。
離れたあと、拓実が私の額に自分の額をそっと寄せた。
「帰ってきてよかった」
「私も……会えてよかった」
「瑠夏」
「ん?」
「好き」
離れていた時間が長かったからなのか、その言葉がいつもより胸の奥まで届いた。
「……私も、大好き」
拓実が嬉しそうに笑う。
「やっぱり、直接聞くと嬉しい」
「電話でも言ってたでしょ」
「うん。でも、今は目の前に瑠夏がいるから」
そう言って、また私の手を握る。
繋いだ手を、もう一度ぎゅっと握る。
「青葉カップ、頑張って」
「うん。今度は絶対、優勝する」
「俺、ちゃんと見てるから」
その言葉に、私は笑った。
今度は、嬉し涙が出そうだった。