春の月明かり
秋風と、君への想い
夏休みが終わり、学校に少しずつ秋の気配が訪れていた。
朝、教室の窓から入ってくる風は、前よりも少しだけ涼しい。
私は席に座ると、鞄からスケッチブックを取り出した。
ページをめくると、そこには夏に描いたひまわりの絵がある。
大きく咲いた黄色い花。
その隣に立つ、神志那くん。
はーちゃんと一緒に花壇へ行った日。
神志那くんが、はーちゃんに優しく花のことを教えてくれた日。
あの日から、私は何度もその絵を見返していた。
「明凛、また神志那くんの絵見てるん?」
隣から友達に声をかけられて、私は慌ててスケッチブックを閉じた。
「ち、違うよ。ひまわりの絵を見てただけ!」
「ふーん?」
友達は、いたずらっぽく笑った。
「神志那くんのこと、好きなんやろ?」
「……っ!」
顔が一気に熱くなる。
「そ、そんな……」
「顔、赤いよ?」
「もう、からかわんで!」
私はスケッチブックを鞄にしまった。
けれど、心の中では、もうごまかせなくなっていた。
神志那くんと話すと嬉しい。
神志那くんが笑うと、私まで笑顔になる。
また一緒に花を見たいと思う。
私は、神志那くんのことが好きなんだ。
そう思うと、胸の奥がきゅっとした。
昼休み。
お弁当を食べ終えた私は、窓の外を眺めていた。
校庭の隅にある花壇では、夏に咲いていたひまわりが、少しずつ季節の変化を迎えている。
あの花壇で、神志那くんと過ごした時間を思い出す。
「明凛」
名前を呼ばれて振り向くと、神志那くんが立っていた。
「神志那くん。どうしたの?」
「花壇、見に行かん?」
「えっ?」
「夏のひまわり、どうなったかなって」
私は思わず笑顔になった。
「うん、行きたい!」
神志那くんと一緒に教室を出る。
廊下を歩きながら、私は何度も彼の横顔を見てしまった。
気づかれないようにしていたつもりだったけれど、神志那くんがこちらを向いた。
「どうした?」
「な、なんでもない!」
「そう?」
彼は不思議そうに首をかしげて、それから優しく笑った。
その笑顔を見て、また胸がどきんとした。
花壇に着くと、夏のひまわりは、少しずつ姿を変えていた。
大きな花びらは落ち始め、花の中心には種ができている。
「もう、夏も終わりなんやね」
私がつぶやくと、神志那くんはうなずいた。
「うん。でも、種ができたら、また来年につながるけん」
「来年も、ひまわりが咲く?」
「ちゃんと育てられたらね」
神志那くんは、花壇を見つめた。
「種をまいて、芽が出て、苗になって。それから花壇に植えて、花が咲くまで育てる。毎年、同じように見えても、少しずつ違うんよ」
「そっか……」
私はスケッチブックを取り出した。
今の花壇を描いておきたかった。
夏の終わりを迎えたひまわり。
そのそばに立つ神志那くん。
鉛筆を動かしていると、彼がそっと覗き込んできた。
「また描いてくれよるん?」
「うん。今の花壇も、残しておきたくて」
「明凛の絵って、見たときのことを思い出せるよな」
その言葉に、私は手を止めた。
「……ほんと?」
「うん。花だけじゃなくて、そのときの気持ちまで残っとる感じがする」
胸が温かくなった。
自分の絵を、そんなふうに思ってくれていたなんて。
「ありがとう、神志那くん」
「こちらこそ。描いてくれてありがとう」
私は少し照れながら、もう一度鉛筆を動かした。
しばらくして、私は描きかけの絵を神志那くんに見せた。
「まだ途中なんやけど……」
彼は絵をじっと見つめた。
「いいね」
「ほんと?」
「うん。花壇の感じも、ちゃんと伝わってくる」
私は嬉しくなって、スケッチブックを抱きしめた。
神志那くんと一緒にいると、絵を描くことがもっと好きになる。
花を見ることも、季節が変わることも、前より大切に思える。
そして何より、彼と過ごす時間が、私にとって特別になっていた。
帰り道。
校門を出ると、秋の風がそっと頬をなでた。
「明凛」
「なに?」
「また、花見に行こうな」
私は足を止めた。
「……うん!」
嬉しくて、自然と笑顔になる。
「来年も、ひまわり見たいね」
「そうやな。来年も、きれいに咲かせよう」
神志那くんは、いつものように優しく笑った。
私はその横顔を見ながら、心の中で小さく願った。
来年も、その先も。
神志那くんと一緒に、花を見ていたい。
そして、いつか。
この気持ちを、ちゃんと伝えられたらいいな。
秋風が吹く帰り道。
私の恋は、少しずつ、確かなものになっていた。
朝、教室の窓から入ってくる風は、前よりも少しだけ涼しい。
私は席に座ると、鞄からスケッチブックを取り出した。
ページをめくると、そこには夏に描いたひまわりの絵がある。
大きく咲いた黄色い花。
その隣に立つ、神志那くん。
はーちゃんと一緒に花壇へ行った日。
神志那くんが、はーちゃんに優しく花のことを教えてくれた日。
あの日から、私は何度もその絵を見返していた。
「明凛、また神志那くんの絵見てるん?」
隣から友達に声をかけられて、私は慌ててスケッチブックを閉じた。
「ち、違うよ。ひまわりの絵を見てただけ!」
「ふーん?」
友達は、いたずらっぽく笑った。
「神志那くんのこと、好きなんやろ?」
「……っ!」
顔が一気に熱くなる。
「そ、そんな……」
「顔、赤いよ?」
「もう、からかわんで!」
私はスケッチブックを鞄にしまった。
けれど、心の中では、もうごまかせなくなっていた。
神志那くんと話すと嬉しい。
神志那くんが笑うと、私まで笑顔になる。
また一緒に花を見たいと思う。
私は、神志那くんのことが好きなんだ。
そう思うと、胸の奥がきゅっとした。
昼休み。
お弁当を食べ終えた私は、窓の外を眺めていた。
校庭の隅にある花壇では、夏に咲いていたひまわりが、少しずつ季節の変化を迎えている。
あの花壇で、神志那くんと過ごした時間を思い出す。
「明凛」
名前を呼ばれて振り向くと、神志那くんが立っていた。
「神志那くん。どうしたの?」
「花壇、見に行かん?」
「えっ?」
「夏のひまわり、どうなったかなって」
私は思わず笑顔になった。
「うん、行きたい!」
神志那くんと一緒に教室を出る。
廊下を歩きながら、私は何度も彼の横顔を見てしまった。
気づかれないようにしていたつもりだったけれど、神志那くんがこちらを向いた。
「どうした?」
「な、なんでもない!」
「そう?」
彼は不思議そうに首をかしげて、それから優しく笑った。
その笑顔を見て、また胸がどきんとした。
花壇に着くと、夏のひまわりは、少しずつ姿を変えていた。
大きな花びらは落ち始め、花の中心には種ができている。
「もう、夏も終わりなんやね」
私がつぶやくと、神志那くんはうなずいた。
「うん。でも、種ができたら、また来年につながるけん」
「来年も、ひまわりが咲く?」
「ちゃんと育てられたらね」
神志那くんは、花壇を見つめた。
「種をまいて、芽が出て、苗になって。それから花壇に植えて、花が咲くまで育てる。毎年、同じように見えても、少しずつ違うんよ」
「そっか……」
私はスケッチブックを取り出した。
今の花壇を描いておきたかった。
夏の終わりを迎えたひまわり。
そのそばに立つ神志那くん。
鉛筆を動かしていると、彼がそっと覗き込んできた。
「また描いてくれよるん?」
「うん。今の花壇も、残しておきたくて」
「明凛の絵って、見たときのことを思い出せるよな」
その言葉に、私は手を止めた。
「……ほんと?」
「うん。花だけじゃなくて、そのときの気持ちまで残っとる感じがする」
胸が温かくなった。
自分の絵を、そんなふうに思ってくれていたなんて。
「ありがとう、神志那くん」
「こちらこそ。描いてくれてありがとう」
私は少し照れながら、もう一度鉛筆を動かした。
しばらくして、私は描きかけの絵を神志那くんに見せた。
「まだ途中なんやけど……」
彼は絵をじっと見つめた。
「いいね」
「ほんと?」
「うん。花壇の感じも、ちゃんと伝わってくる」
私は嬉しくなって、スケッチブックを抱きしめた。
神志那くんと一緒にいると、絵を描くことがもっと好きになる。
花を見ることも、季節が変わることも、前より大切に思える。
そして何より、彼と過ごす時間が、私にとって特別になっていた。
帰り道。
校門を出ると、秋の風がそっと頬をなでた。
「明凛」
「なに?」
「また、花見に行こうな」
私は足を止めた。
「……うん!」
嬉しくて、自然と笑顔になる。
「来年も、ひまわり見たいね」
「そうやな。来年も、きれいに咲かせよう」
神志那くんは、いつものように優しく笑った。
私はその横顔を見ながら、心の中で小さく願った。
来年も、その先も。
神志那くんと一緒に、花を見ていたい。
そして、いつか。
この気持ちを、ちゃんと伝えられたらいいな。
秋風が吹く帰り道。
私の恋は、少しずつ、確かなものになっていた。