『氷の王子は、地味子のパレットに溺れたい』
私はペンケースを取り出した。

ジッパーには、小さなアクリルキーホルダーがついている。

まだグッズ販売なんて夢にも思っていなかった頃、試しに少数だけ作ったナナイロの初期グッズ。

今見ると、ちょっと恥ずかしい。

でも捨てられない。

私が初めて「誰かに自分の絵を届けたい」と思った頃の証だから。

(さて……描こう)

タッチペンを握る。

その瞬間だった。

バサッ。

重い扉が開いた。

「ひゃいっ!?」

心臓が跳ねた。

私は反射的にiPadを伏せた。

誰!?

先生!?

恐る恐る顔を上げ――。

息が止まった。

「……あ」

如月怜。

一番、ここにいるはずのない人だった。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop