​『氷の王子様は、私の秘密を知っている』 〜学校一のイケメンの正体は、私の重度なトップオタク(R_K)でした〜

どうして。

なんで。

昨日、R_Kだと判明したばかりの男が。

今日も。

よりによって、今。

如月くんは答えなかった。

その視線は私ではなく――。

iPad。

画面。

未公開の新作。

「…………」

まずい。

まずいまずいまずい。

私は慌てて画面を伏せた。

「こ、これは……!」

言い訳。

何か。

何でもいい。

でも。

出てこない。

如月くんが、ゆっくり私を見る。

昨日までと違う目だった。

冷たい三白眼が、大きく見開かれている。

「……上白木」

「は、はい……」

「今の絵」

「…………」

「もう一回見せて」

「む、無理です!」

初めてだった。

如月くんに。

いや、誰かに。

こんなにはっきり「無理」と言ったのは。

自分でも驚いた。

如月くんも一瞬、目を見開く。

私はiPadを胸に抱き締めた。

「だ、ダメ……です」

「なんで」

「なんでも……です」

怖い。

でも。

これは譲れない。

キャンバスの中だけは。

私だけの場所だから。

如月くんはしばらく黙っていた。

そして。

ポケットから何かを取り出した。

「じゃあ、これは?」

「……え?」

彼の指先から、小さなものが揺れた。

七色。

見覚えのあるキャラクター。

私の呼吸が止まる。

「…………あ」

ナナイロ初期限定アクリルキーホルダー。

昨日。

なくしたことにすら気づいていなかった。

「昨日、カウンターの下に落ちてた」

「…………」

「これ、初期に少数しか作られてない」

知っている。

作った本人だから。

「しかも」

如月くんの視線が、私の胸元に抱かれたiPadへ落ちる。

「さっき描いてた絵」

嫌。

「ナナイロが昨日、ラフだけ載せてた新作と同じだった」

嫌。

「色の置き方も」

やめて。

「線も」

お願い。

「全部、同じ」
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