その青は沈む
それから二日後。
僕は撮影が終わったあとで、妹から貰ったメールを見ながら、病院の中を進んでいた。階段を上がって、二階へ行ったら、受付があって、窓口の狭い机に面会帳が開かれていた。そこには一足先に〈佐伯柚月〉の文字があった。
『は? まだ許してないんだが?』と思って、妹のあとに自分の名前を力強く書いた。
それから、『あの野郎、退院したら、ただじゃおかないからな』と思いながら廊下を進むと、着いた先は個室だった。すぐに気まずくなって、ドアを滑らせた。
「佐伯……いる……?」そう言って、覗いてみたら、彼は窓の外を見ているようだった。
ベッドは背を起こして、ソファーのように寄りかかれるようになっている。彼はそこに座って、お腹の辺りで手を組んでいた。
「なんだ」彼は僕に顔も向けずに、ただ言った。
でも、声に張りがないし、髪も伸びて手入れもしてなさそうだ。よく見たら、髭も整えてないし、痩せたように思える。
「手術したって聞いたから、お見舞い」そう言って、僕はケーキ屋で買った箱を見せた。
「そこに置いといてくれ……、柚月が食べる」彼は言ったあとで、長い息を吐き出した。
やっぱり元気がない。甘いものは嫌いじゃないのに、見向きもしない。僕は少し不安になった。
そしたら、病室をノックする音が聞こえた。すぐに看護師が食事を持ってきて、「佐伯さん、ここに置いておくので、しっかり食べてくださいね」と食事を置いてから、病室を出て行った。けど、彼は食事にも目を向けず、ただ黙って外を見ていた。
「……食べないの?」そう聞くと、彼は少し首を振って応えた。だから僕は続けて、「でも、少しくらいは食べないと……」と言ったら、「食欲がない……」と言った。
彼の様子には影が差したようで、話す声は抑揚もない。けど、手術は終わってるし、経過も……。
「でも、手術は成功したんだろ?」気づけば、躊躇いもなく聞いていた。
「さぁな、詳しく聞いてない」彼は変わらない。
「どこ……手術したの……?」僕はまさかと考えた。
「腹……のあたり」
『いまごまかした』と思ったけど、言葉が出なかった。泣きそうになったけど、何とか納得しようと思った。
その時、ドアが開いて、妹が入ってきた。慌てて顔を逸らして、二人を見ないようにした。
「……佐伯さん、なんで笑ってるんですか?」と妹は言ってから、続けて「あ……。また翔太をからかって遊んだんですね」と声を少し上げた。怒ってるようだった。
「別に。俺は正直に応えた、それだけだけど?」彼は少し明るい声で、笑うように言った。
「もう、子どもじゃないんですから、ほどほどにしてください」
妹が怒る横で、僕は嬉しいのか、悲しいのか分からなくなった。けど、二人が笑っているのが幸せそうに思えた。
でも、面会帳の件だけは退院したら、絶対に問い詰めてやる。そう固く誓った。
僕は撮影が終わったあとで、妹から貰ったメールを見ながら、病院の中を進んでいた。階段を上がって、二階へ行ったら、受付があって、窓口の狭い机に面会帳が開かれていた。そこには一足先に〈佐伯柚月〉の文字があった。
『は? まだ許してないんだが?』と思って、妹のあとに自分の名前を力強く書いた。
それから、『あの野郎、退院したら、ただじゃおかないからな』と思いながら廊下を進むと、着いた先は個室だった。すぐに気まずくなって、ドアを滑らせた。
「佐伯……いる……?」そう言って、覗いてみたら、彼は窓の外を見ているようだった。
ベッドは背を起こして、ソファーのように寄りかかれるようになっている。彼はそこに座って、お腹の辺りで手を組んでいた。
「なんだ」彼は僕に顔も向けずに、ただ言った。
でも、声に張りがないし、髪も伸びて手入れもしてなさそうだ。よく見たら、髭も整えてないし、痩せたように思える。
「手術したって聞いたから、お見舞い」そう言って、僕はケーキ屋で買った箱を見せた。
「そこに置いといてくれ……、柚月が食べる」彼は言ったあとで、長い息を吐き出した。
やっぱり元気がない。甘いものは嫌いじゃないのに、見向きもしない。僕は少し不安になった。
そしたら、病室をノックする音が聞こえた。すぐに看護師が食事を持ってきて、「佐伯さん、ここに置いておくので、しっかり食べてくださいね」と食事を置いてから、病室を出て行った。けど、彼は食事にも目を向けず、ただ黙って外を見ていた。
「……食べないの?」そう聞くと、彼は少し首を振って応えた。だから僕は続けて、「でも、少しくらいは食べないと……」と言ったら、「食欲がない……」と言った。
彼の様子には影が差したようで、話す声は抑揚もない。けど、手術は終わってるし、経過も……。
「でも、手術は成功したんだろ?」気づけば、躊躇いもなく聞いていた。
「さぁな、詳しく聞いてない」彼は変わらない。
「どこ……手術したの……?」僕はまさかと考えた。
「腹……のあたり」
『いまごまかした』と思ったけど、言葉が出なかった。泣きそうになったけど、何とか納得しようと思った。
その時、ドアが開いて、妹が入ってきた。慌てて顔を逸らして、二人を見ないようにした。
「……佐伯さん、なんで笑ってるんですか?」と妹は言ってから、続けて「あ……。また翔太をからかって遊んだんですね」と声を少し上げた。怒ってるようだった。
「別に。俺は正直に応えた、それだけだけど?」彼は少し明るい声で、笑うように言った。
「もう、子どもじゃないんですから、ほどほどにしてください」
妹が怒る横で、僕は嬉しいのか、悲しいのか分からなくなった。けど、二人が笑っているのが幸せそうに思えた。
でも、面会帳の件だけは退院したら、絶対に問い詰めてやる。そう固く誓った。