その青は沈む
 そして、海に着いて、空を見たら、夕焼けの赤が白い空に重なっていた。駐車場には旧車が停められていて、その横には黄色い軽自動車が停められていた。その隣に僕は車を停めた。

 車から降りたら、妹と稔くんが話をしていた。彼は車のボンネットの縁に、軽く尻を乗せて煙草を吸っていた。僕は日傘を手にしてから、自販機を探したけど、見つけられなかった。でも、涼しくなりそうだし、気にしなくていいと思った。

 話をしていた妹は小さな花火を手に持って、僕のところに来て言った。

「約束したけど、来年は忙しくなりそうだから、これでチャラにして?」
 気まずそうだったけど、いたずらっ子のような顔をしていた。

「気にしない。生まれたら教えて」と僕が言ったら、妹は強く頷いた。そこへ稔くんがやってきて、水の入った青いバケツを置いた。それを合図に妹が言った。

「さぁ、いくぞ。無限の彼方へ」背伸びするように両手を上げて、海の方へ歩きだした。

「台詞のチョイスどうなってんの……。まぁ、いいか」と僕は独り言を呟いて後を追った。

「お前ら少しくらい荷物持てよ……」稔くんは重そうな顔をして、バケツを持ちながらやってくる。

「女の子みたいなこと言ってる……」花火を手に持って、妹は楽しそうだった。

「ていうか、早くない? まだ、夕方だし……」僕は妹に日傘を差そうとして、砂浜に足を取られそうになりながら歩いた。

 波打ち際の近くへ着いてから、三人同時に振り返った。そしたら、彼は煙草をくわえて、気だるそうに歩いてきた。

「佐伯さん、早く」妹の急かす声に、彼は穏やかな顔で笑った。その背後に陽が差して、風が吹き抜けた。そのときに彼の毛先が青く見えた。

「風、つえーな」と彼は眉を寄せて、しゃがみ込む。

「すぐ座るとか、ジジィの始まりっすね」と稔くんがからかった。

「黙れ、小僧」と彼は普通に言った。

 僕は笑いそうになって、「確かに。もう三十路だもんね」と言った。

「お前も変わらんだろ」なんて彼が言うから、「全然違います、三つ違います」と強調してやったら、舌打ちされた。聞こえてるのにバカめ、海に突き落としてやろうかと思ったけど、僕は大人だから止めてあげた。

 少しずつ空が暗くなって、見上げたら、星がありそうな空だった。
 四人で風が当たらないように囲んで、花火をした。黄色や赤の花火に、青い色の置き花火。最後に線香花火を持って、それぞれの顔がぼんやりと照らされていた。

 小さな音がぱちぱちと鳴って、ゆっくり玉を作った。火が消えたと思ったら、音もなく落ちていくのを、月の光が照らしていた。
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