その青は沈む
 公園で子どもと遊んだ帰りに、迎えにきた彼を少しからかったら、子どもにこう言われた。

「翔太おにーちゃん、そういうことすると、女の子に嫌われるよ」

「ごめんなさい……」

 彼が子どもを抱き上げたら、僕の頭を子どもが撫でてくれた。彼に早く帰れと言われたけど、少し距離を置いて、背後の写真を撮って帰った。

 それから月日が経って、二人目が出来たと聞いた。生まれた日は仕事で行けなかったけど、数日後に写真を撮らせてもらった。二人目は女の子で「結季」と名付けたようだ。可愛らしい名前がメールで届いていた。

 二人目が生まれても、僕は変わらずに、家へ行っていた。彼は二人目が出来た頃に家を建てたけど、いつ行っても綺麗だった。でも、よく見たら、謎の置物があったり、工作物が並べてあったりして、ときどき子どもに「いつまで取ってあるの?捨てなよ」と怒られていた。

 子どもが大きくなるにつれて、僕も彼も妹も年を重ねた。子どもの思春期や反抗期、そして恋の話が出たこともあった。
 結季ちゃんが高校生になったときだった。僕が家にたまたま行った時に、告白をされたけど、ちゃんと断った。そしたら、結季ちゃんも最初から分かってたと言って笑った。

 長男の優輝くんは中学に入ってからモテだして、高校では告白されるのが恒例行事みたいだとぼやいてた。他の奴に言ったら殴られるぞと思いながら、聞いていたけど、微笑ましかった。そして、その頃に優輝くんは音楽を始めた。

 それと同時に、僕は彼から会社を任された。

 陽の当たる小さな縁側で、将棋盤を前に駒を指しながら、彼と話した。

「いいの?本当に」

「俺はもう、あの椅子から降りた」

「そう。でも、僕は経営のこと何も分からないけど」

「稔に聞け」

「わかりました。そう致します」

「お前、彼女は作らないのか」

「興味ない」

 彼は胡座をかいて、膝に肘をついて頬杖をつきながら、考えるように将棋盤を見ていた。そして、駒を一つ進めた。

「なぁ」

「なに」

「子どもたちが巣立ったら、一緒に住まないか」

 僕はそこで手を止めて、彼を見てから、すぐに駒を置いた。

「僕は一人で大丈夫」

「柚月がそうしたいって言ってる」

 その手は卑怯だと言いたかった。けど、僕のほうが詰めが甘かったみたいだ。

「じゃあ、僕の部屋は小さくていいよ」

「今度、担当者が来るから、お前も参加しろ」

 頷くふりをして俯いたら、膝が滲んでいた。年取ったせいだと言い聞かせたけど、子どもの頃から、変わらない僕の姿だと思った。
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