戦闘狂の新妻
リリーはオーガストと三人の兵を伴って城壁に上がり、夜風に吹かれながら見張りの兵たちへ矢を渡した。
「この矢に火を付けて、あの樽を狙って射っていただける? 先端に松脂を塗ってありますから」
「アイアイ、マム。またなんか面白いことしてるんですか?」
「ええ、面白いことになるわ。あなた、キャンプファイヤーってご存じ? 南の国の儀式だそうだけど」
「学がないもので存じ上げませんが、それを見られるってことですかね。ちょいと下がっててください……よっ」
火のついた矢が夜空を裂いて放たれた。樽に直撃はしなかったが、燃える矢羽根が樽の側面をかすめた。その瞬間、樽は轟と音を立てて激しく燃え上がった。
「ひえっ」
「ほう」
兵たちが小さく悲鳴を上げ、オーガストもわずかに息を吐いた。
「残りも全部お願いします」
「えっ、はい」
リリーに促され、見張りの兵たちは次々と残りの樽にも火矢を放った。
樽の作成を手伝った三人の兵士たちは肩を寄せ合い、海上で燃え盛る樽と、次々に海賊船へ火が燃え移っていく様子を見つめている。
オーガストもリリーの隣に立ち、炎に染まる海原を見渡した。真っ黒な瞳にちらちらと炎の影が踊っている。
「海賊が一人も飛び出してこないな。ふむ、残念だ」
「起きていらしたお一人以外は、ずいぶん寝汚いみたいですね。このまま永眠なさるのではないでしょうか」
さらりと言ってのけるリリーを、兵士の一人が恐る恐る覗き込んだ。
「ちなみに、あのワイン樽に混ぜた薬液はなんだったんですか?」
「アコナイトです。トリカブトとも呼ばれる即効性の毒ですわね」
「……どこに植えました?」
「中庭の、立ち入り禁止地区に。今後とも立ち入り禁止ですよ」
リリーはにこりと微笑んで、兵士は真顔で敬礼した。
「この矢に火を付けて、あの樽を狙って射っていただける? 先端に松脂を塗ってありますから」
「アイアイ、マム。またなんか面白いことしてるんですか?」
「ええ、面白いことになるわ。あなた、キャンプファイヤーってご存じ? 南の国の儀式だそうだけど」
「学がないもので存じ上げませんが、それを見られるってことですかね。ちょいと下がっててください……よっ」
火のついた矢が夜空を裂いて放たれた。樽に直撃はしなかったが、燃える矢羽根が樽の側面をかすめた。その瞬間、樽は轟と音を立てて激しく燃え上がった。
「ひえっ」
「ほう」
兵たちが小さく悲鳴を上げ、オーガストもわずかに息を吐いた。
「残りも全部お願いします」
「えっ、はい」
リリーに促され、見張りの兵たちは次々と残りの樽にも火矢を放った。
樽の作成を手伝った三人の兵士たちは肩を寄せ合い、海上で燃え盛る樽と、次々に海賊船へ火が燃え移っていく様子を見つめている。
オーガストもリリーの隣に立ち、炎に染まる海原を見渡した。真っ黒な瞳にちらちらと炎の影が踊っている。
「海賊が一人も飛び出してこないな。ふむ、残念だ」
「起きていらしたお一人以外は、ずいぶん寝汚いみたいですね。このまま永眠なさるのではないでしょうか」
さらりと言ってのけるリリーを、兵士の一人が恐る恐る覗き込んだ。
「ちなみに、あのワイン樽に混ぜた薬液はなんだったんですか?」
「アコナイトです。トリカブトとも呼ばれる即効性の毒ですわね」
「……どこに植えました?」
「中庭の、立ち入り禁止地区に。今後とも立ち入り禁止ですよ」
リリーはにこりと微笑んで、兵士は真顔で敬礼した。