たしかにお姫様に憧れたことはあるけれども、一夜の過ちから親会社の若社長に「キミ以外あり得ない」と溺愛されるなんて、ありえないですよね?

『異動辞令、確認した?』

東堂秋也と表示された名の下に、メッセージが表記されている。
今回の異動に職権を乱用したのではないか――そう疑わずにはいられない第一容疑者である。
たしかに、元々働いていた巣鴨食品の東京支社に戻りたいとは言っていた。
しかし、徳島県への赴任は最低でも三年と言われており、まだ二年しかいないこの時期の異動はあり得ないのだ。

『何かしたんですか?』

そう返信をしたら、すぐに既読がついて返事が来た。

『何のこと?』

きっと、とぼけている。
そう思ったけれど、確信はない。
子会社から、親会社への異動という話はこれまでに聞いたことのない栄転だ。
しかも、私はまだ入社して五年目の若手社員に分類される立場――裏で手を回したとしか思えない。
しかし、こんなことを言ってしまえば、次は脅しのメッセージでも来るのではないかと思い、既読だけを付けて返信はしなかった。
だが、返信をしなくてもブブッとスマホは振動する。

『十月から楽しみだね。待ってるよ』

そんなメッセージが届いていると知ったのは、次にスマホを開いた昼休憩の時だった。
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