たしかにお姫様に憧れたことはあるけれども、一夜の過ちから親会社の若社長に「キミ以外あり得ない」と溺愛されるなんて、ありえないですよね?
そして、改めて部屋のインターフォンが鳴った。
部屋の中にいることはバレているので、チェーンを付けたままドアを開いた。
「え、何これ。ねぇ、ちゃんと開けてよ」
ドアの隙間から伸ばした指で、チェーンをガチャガチャと揺らす。
いや、怖い怖い。
「嫌ですよ。開けたら入ってくるじゃないですか」
「手伝いに来たんだから、入るよ。ていうか、入らないと荷解きできなくない?」
「え? もしかして、本当に荷解きに来たんですか?」
邪なことを考えているなら、この辺りで不機嫌になって帰ってもおかしくはない。
それなのに、この男は一切そんなそぶりを見せず荷物のことばかり言っている。
「ずっとそう言ってるじゃん。いくら一人暮らしとはいえ、重たいものとかあって大変でしょ」
勝手に人の家の住所にやって来て、まともっぽいことを言う彼に目を丸くした。
そして、完全に信用したわけではないけれどチェーンを外した。
もし、変なことをしたら大声を出す――そのつもりだ。
「やっと取ってくれた。じゃあ、やっちゃお。二人ですれば早いでしょ」
インターフォン越しには見えなかったけれど、彼の手には何かが入っているビニール袋が握られていた。