たしかにお姫様に憧れたことはあるけれども、一夜の過ちから親会社の若社長に「キミ以外あり得ない」と溺愛されるなんて、ありえないですよね?

***

何日かに分けて行うはずだった作業も、二人で行えば数時間で終わった。

「すみません。助かりました。ありがとうございました」
「いや、俺が手伝うって言ったから。でも、春香ちゃんって意外と人使い荒いんだね」
「それは……すみません」

力作業だけをしてくれるのかと思いきや、荷解きを手伝ってくれた彼。
そんな彼に「あれはそっちです」「それはここに置いてください」など色々と指示をしてしまい、社長を使うという失礼極まりないことをしてしまったことを深く反省した。

「冗談だから。そんな本気で謝らなくても」
「いえ。東堂社長に失礼なことをしたのは事実ですから。あの、ご飯まだならどこか行きませんか。買ってくるのでも。もちろん奢ります」
「あー。せっかくのお誘いだけど、そろそろ会社戻らないとまずいんだよね。会議の時間ズラしてるから」

へらっと笑いながら、とんでもないことを言う彼に目を丸くした。
社長が出る会議なんて、副社長や専務、常務、本部長――私からすれば雲の上の人たちが集まるものだ。
そんな人たちの予定を、私の荷解きのために動かした。
そう理解した瞬間、サッと血の気が引いた。
< 21 / 23 >

この作品をシェア

pagetop