たしかにお姫様に憧れたことはあるけれども、一夜の過ちから親会社の若社長に「キミ以外あり得ない」と溺愛されるなんて、ありえないですよね?
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あの日――イケメンと過ごした部屋を出た後の話をしよう。
彼と一夜を過ごした部屋、そこがいわゆる高級ホテルと呼ばれる部類の一室だと知ったのはホテルの敷地を出てからだった。
廊下やロビーの装飾がやたらと派手だなぁ、とは思った。
そして、従業員の接客態度の良さ。
私が研修のために借りた安いビジネスホテルとは全然違う。
お金、足りなかったかもという一抹の不安を抱えた。
しかし、宿泊しているビジネスホテルから近い場所だったのでバレないようにそそくさと部屋へ戻った。
自室へ入ると、鞄を雑にベッドに投げて、体もダイブした。
そして、外へ出て風に当たったことで、少しすると二日酔いもマシになり、だんだんと、記憶をなくすまで飲んだ昨夜のことが蘇ってきた。
「彼女、妊娠したんだ」
彼氏――いや、今となっては元彼氏の北山夏樹と、三か月ぶりに会ったのは、どこにでもあるファミレスだった。
夏樹とは、付き合って三年。
そして、私は二十七歳で彼は三十歳。
『結婚』というワードを自然と意識して、私達もそろそろかな、と彼に会うたびに頭の中を支配するようになっていた。
しかし、彼は突然、彼女が妊娠したと捉えられる言葉を放った。
けれど、彼女である私は妊娠していない。
ここで言う彼女というのは交際相手という意味ではない。
夏樹の言う『彼女』とは、私ではない。
今、彼の隣でメソメソ泣いている女のことだ。